自転車やバイクのパーツを分解して転売したら摘発される?
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豊橋市役所が公開する「校区別街頭犯罪発生状況(令和2年1月~12月)」によると、車両のパーツのみを盗む「部品ねらい」が起きた件数は前年より増加しています。愛知県全体でみると発生数の順位は18位とさほど高くはありませんが、豊橋市内でも部品を狙った犯行が増加しているようです。
盗まれた部品の処分方法は、自己使用のほか「転売」もめずらしくありません。全国の事例に目を向けても、盗難自転車や盗難バイクなど、さまざまな転売をきっかけに犯罪が発覚した事例が多数あります。
本コラムでは、自転車やバイクのパーツを盗んで転売すると警察に摘発されてしまうのか、適用される罪や刑罰、転売したパーツが盗難品だと知らなかった場合の責任などをベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。
1、パーツの転売で逮捕された実例
副業や小遣い稼ぎのために不要になった自転車やバイク、自動車のパーツをネットオークションやフリマアプリなどで転売している方は少なくないでしょう。
当然ですが、転売目的で自転車・バイク・自動車からパーツをはずして盗んだり、盗まれたパーツを転売したりといった行為が発覚すれば、警察に逮捕されてしまう可能性があります。
まずはパーツの転売行為で逮捕された実例を挙げていきましょう。
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(1)バイクを分解しネットオークションで転売した事例
平成17年、盗んだバイクを部品レベルにまで分解し、転売によって3か月あまりで約1000万円の不正な利益を得ていた男が逮捕されました。
男は、ネットオークションで「交換用部品」といった名目で出品していたようです。保管していた大量のパーツが盗品だったことが発覚した直後、男は「盗品とは知らずに買った」と容疑を否定していたため盗品等有償譲り受け容疑で逮捕されていました。しかし、男が主張する購入代金の入出金記録が確認できなかったため、さらに窃盗の容疑で再逮捕されたと報道されています。 -
(2)特定メーカーの自動車をねらって盗み、パーツを転売した事例
平成17年、特定メーカーの自動車をねらって盗みを繰り返し、分解してインターネットオークションで転売していた窃盗グループ9人が窃盗容疑で逮捕されました。
確認された被害件数は約40台でしたが、グループのメンバーが所有していた銀行口座には5000万円の入金があり、被害件数は100件を超えていると推定されます。特定メーカーの自動車をねらった経緯について「部品の引き合いが多く、金になった」と供述していたと報道されています。 -
(3)電動自転車のバッテリーを盗みフリマアプリで転売した事例
令和3年6月、集合住宅の駐輪場で電動アシスト自転車2台からバッテリー2個をはずして盗んだ男が、窃盗容疑で逮捕されました。
男はフリマアプリなどを使ってバッテリーを1個1~2万円程度で転売していたといい、同様の被害が多発していたことから、ほかの事件にも関与していた疑いがもたれていることが報道されています。
2、自転車やバイクが盗品だったことを知らなくても罪になる?
前章で紹介した事例は、いずれも「盗品だと知っていて転売した」または「転売目的で盗んだ」といったケースでした。
では、友人や知人から譲り受けた、あるいは中古部品としてネットオークションなどで購入したものをさらに転売したといったケースでも、やはり罪に問われるのでしょうか?
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(1)盗品譲受けの罪とは?
自転車・バイク・自動車の本体やパーツを盗む行為は、刑法第235条の「窃盗罪」にあたります。自身が盗んだこれらを転売しても「事後の処分行為」となるだけで、転売行為そのものが罰せられるわけではありません。
ただし、第三者が盗んだ被害品を譲り受ける行為は、有償・無償にかかわらず犯罪になります。これが、刑法第256条に規定されている「盗品譲受けの罪」です。
盗品譲受けの罪は、さらに有償・無償によって罪名・刑罰が区別されています。- 無償の場合
同条1項の「盗品等無償譲受け」にあたり、3年以下の懲役が下されます。 - 有償の場合
有償での譲受けは同条2項の「盗品等有償譲受け」として10年以下の懲役および50万円以下の罰金が科せられます。また、同項ではほかにも「運搬」「保管」「有償処分あっせん」について同様に罰する旨が規定されているため、これらを広くまとめて「盗品関与の罪」ともいいます。
たとえば、先に紹介した「バイクを分解しネットオークションで転売した事例」では、盗難バイクを保管していることが警察に発覚したため、まずは「盗品等有償譲受け」として逮捕されました。その後、取り調べを経て窃盗罪で再逮捕されたと報道されています。
- 無償の場合
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(2)盗品だと知らなかった場合でも罪になるのか?
盗品譲受けの罪が成立するには「盗品である」という認識が必要とされています。つまり「盗品だとは知らなかった」というケースでは罪を問われません。
たとえば、次のようなケースでは盗品譲受けの罪は成立しないと考えられます。- 友人から「不要になったので使ってほしい」と譲られた
- 知人から「誤って2個買ってしまったので1個を買い取ってほしい」と言われて買い取った
- 中古品販売店で陳列されていたので代金を支払って購入した
- ネットオークション・フリマアプリで出品されていた商品を購入した
ただし、これらのケースに該当する場合でも「もしかしたら盗品かもしれない」という認識があれば罪は逃れられないとされています。これを「未必の故意」といい、盗品であると認識していた場合と同じく処罰の対象です。
なお、警察の捜査によって「盗品である」と発覚した場合は、証拠品として警察に押収されることになります。盗難から2年以内は民法第193条の規定に従い、元の所有者=被害者の返還請求権が保障されているので、事件が終了すると警察から被害者へと還付されるケースがほとんどでしょう。
すると「盗品だと知らずに購入した人が損をする」という状況になりますが、この場合は窃盗の犯人に対して損害賠償を請求し、回復を目指すことになります。
3、パーツ転売で逮捕されると帰宅できない可能性が!
パーツ転売で盗品譲受けの罪の容疑をかけられてしまうと、警察に逮捕される危険が高まります。
警察に逮捕されるとどうなってしまうのでしょうか?
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(1)逮捕されると身柄を拘束される
警察に逮捕されると、その時点でただちに身柄拘束を受けてしまいます。自由な行動や連絡などはすべて制限され、帰宅することも、家族に電話をかけて助けを呼ぶこともできません。会社などへ休むといった連絡をすることもできなくなるということです。
逮捕されている期間は、最低でも警察署の留置場に1~2日は宿泊を強いられるでしょう。この間、逮捕された本人と自由に面会できるのは弁護士に限られます。 -
(2)身柄拘束は起訴まで最長23日間におよぶ
前述の通り、警察に逮捕されると、まず48時間以内の身柄拘束を受けます。この段階で容疑が晴れれば釈放されますが、ほとんどのケースではさらに検察官のもとへと事件が引き継がれます。
これが「送致」という手続きです。ニュースなどでは「送検」と呼ばれているので、聞き覚えのある方も多いでしょう。
送致されると検察官の段階でも24時間以内の身柄拘束を受けたのち、さらに「まだ身柄を拘束して取り調べる必要がある」と判断されれば「勾留」が請求されます。
裁判所が勾留を認めると、原則10日間、延長請求でさらに10日間、合計20日間にわたって帰宅できない日が続きます。逮捕から起訴までの身柄拘束は合計すると最長で23日間です。
この期間は帰宅できないだけでなく、自由に電話やメッセージのやり取りもできません。 -
(3)起訴されるとさらに身柄を拘束される
罪を犯して逮捕されれば必ず刑罰を受ける、というわけではありません。誰であっても、裁判の場で有罪を言い渡されない限り刑罰を受けないのです。
犯罪の容疑をかけられている被疑者について「刑事裁判で罪を問うかどうか」を決めるのは検察官です。検察官が「起訴」した場合は刑事裁判が開かれることになり、一時的な釈放である「保釈」が認められない限り、刑事裁判が終わるまで身柄拘束が続きます。
刑事裁判が終結するには、単純な事件でも起訴から2~3か月の時間がかかるのが一般的です。組織的な犯罪だったなど背景が複雑である、無罪を主張しているといったケースではさらに長引くこともあるので、逮捕から数か月、半年、1年近くも帰宅できない事態も考えられます。
4、パーツ転売の容疑をかけられたら弁護士に相談を
パーツ転売の容疑をかけられてしまうと、警察に逮捕されて長期の身柄拘束を受けるおそれがあります。
帰宅や自由な連絡も許されないまま最長23日間にもわたって社会から隔離されてしまうので、ただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。
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(1)早期釈放や重すぎる処分の回避が期待できる
弁護士にサポートを依頼すれば、窃盗被害者との示談交渉や捜査機関・裁判官へのはたらきかけを通じて、逮捕・勾留による身柄拘束からの早期釈放や、厳しい刑罰の軽減が期待できます。
逮捕された直後から勾留が決定するまでの72時間は、たとえ家族とであっても面会は許されません。厳しい取り調べにどうやって対抗すればよいのか、送致・勾留を回避するためにどのような供述を尽くせばよいのかといったアドバイスも必要です。この期間に面会できるのは弁護士だけなので、ためらうことなく弁護士を呼んで面会を求めましょう。 -
(2)無実の疑いを晴らすためのサポートが得られる
盗品であることを知らずに譲受け・購入したにもかかわらず盗品譲受けの罪で容疑をかけられた場合は、無罪を主張することになります。
しかし、実際に盗品であることを知らなかった場合でも、取り調べで「知らなかった」と主張するだけでは疑いを晴らすのは困難です。弁護士に依頼し、無実の疑いである証拠を集め、捜査機関や裁判官にはたらきかけるサポートを受けましょう。
5、まとめ
自転車・バイク・自動車の本体やパーツを盗み取ることは、もちろん犯罪です。
また、盗品であることを知りながら、その本体や分解したパーツを譲受けて転売した場合は、刑法の「盗品譲受けの罪」に問われます。容疑をかけられれば逮捕され、厳しい刑罰を科せられるおそれが高いでしょう。
盗品であることを知っていれば罪は免れられず、盗品だと知らなかった場合は無罪を主張することになります。いずれにしても弁護士のサポートは欠かせません。
パーツ転売の容疑をかけられてしまい、「捕まるのではないか」と逮捕や厳しい刑罰に不安を感じているなら、刑事事件の解決に向けた知見が豊富なベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています