万引きした後日に電話がきた! 呼び出しを無視したらどうなる?
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豊橋市を管轄する愛知県警察の「犯罪統計資料」によると、令和3年に愛知県内で起きた万引き事件の認知件数は5400件ありました。
万引き程度であれば見つからなければ逮捕されない、と思っていませんか。しかし、万引きはれっきとした犯罪です。万引きをした当日は従業員や警備員などに見つかることなく逃げることができたとしても、後日警察などから電話が来た、というケースはたびたびあります。万引きをした後日、警察からの呼び出しの電話が来た場合、どのような展開が待っているのでしょうか。
本コラムでは、万引きをしたあとで警察から電話がかかってきた場合に考えられるパターンや電話・呼び出しに応じなかった場合に起きる展開を、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。
1、警察からの電話、どんなパターンが考えられる?
突然、警察から電話がかかってくれば、誰でも「どんな用件だろう?」と不安になるはずです。着信履歴で警察から電話がかかってきたことが判明した場合、どのような理由が考えられるのでしょうか。
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(1)犯罪の容疑をかけられているパターン
何らかの犯罪にあたる行為があり、容疑をかけられている場合は、警察が事情を尋ねるために出頭を求める電話をかけてくることがあります。
「犯人ではないか」という疑いを持たれているので、すでに裏では捜査が進展していると考えるべきです。 -
(2)事件の参考人として聴取を求められるパターン
ある程度の疑いはあるものの、警察が証拠をつかんでいない場合は「事件について知っていたり、犯人を目撃したりといった状況はないか?」といった参考人としての聴取を求めてくるかもしれません。
あるいは、まったく関係のない別の事件や事故について純粋に事情を尋ねようとしているだけといったパターンも考えられます。 -
(3)落とし物が見つかった連絡が入るパターン
財布やスマホなどを落としてしまい、誰かが拾って警察に届けてくれた場合は、警察から「落とし物が届いています」という連絡が入ります。
万引き事件とはまったく関係のない連絡なので、心配は無用です。 -
(4)警察を装った詐欺電話のパターン
警察官を名乗って、「あなたのクレジットカードが不正利用されているようだ」といった連絡が入った場合は要注意です。
特殊詐欺の手口のなかには、警察官や銀行員などを名乗ってクレジットカード・キャッシュカードをだまし取り、暗証番号を聞き出して不正にお金を引き出す手口があります。特に、警察官を名乗っているのに警察署の代表電話ではなく、携帯電話の番号だった場合は警戒したほうがよいでしょう。
豊橋警察署をはじめ愛知県警が所轄する警察署の代表番号は、下4桁がすべて「0110」です。ほかの電話番号からかかってきた場合は警察署・所属する課・氏名を尋ねてから一度通話を終了してください。そのうえで、教えてもらった該当する警察署の代表電話番号を調べてこちらから電話をかけてみて、実際にそういった事件が起きているのかを確認しましょう。
2、万引きしたあとで警察からの電話! 逮捕される?
事件を起こしてしまったあとは、「逮捕」に不安を感じる日々を過ごすことになります。
たしかに、ニュースや新聞などで報じられる事件は「容疑者が逮捕された」といった内容ばかりです。一度ニュースになってしまえば、インターネット上にあなたの実名が残り続けてしまう可能性は否定できません。
万引きをしたあとで警察からの電話がかかってくれば、やはり逮捕は間近なのでしょうか。
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(1)必ず逮捕されるわけではない
万引きをしたからといって、必ず逮捕されてしまうわけではありません。ニュースや新聞などで報じられる逮捕を伴う事件は、毎日のように起きている事件のごく一部だけです。
令和3年版「犯罪白書」によると、令和2年中に検察庁が処理した窃盗事件のうち、逮捕を伴った事件は30.0%でした。つまり、窃盗事件の70%は逮捕されずに処理されたことになります。
警察捜査の基本を定める犯罪捜査規範には「捜査は、なるべく任意捜査の方法によって行われなければならない(第99条)」という定めがあります。したがって、逮捕は例外的な措置だと考えておきましょう。 -
(2)電話に出たり折り返したりするとどうなる?
万引きの容疑をかけられた関係で警察から電話がかかってきた場合は、電話に出ると「事件のことを詳しく尋ねたいので、○月○日の○時に警察署へ来てほしい」と出頭を求められます。
着信があったものの、仕事中や車の運転中で出られなかったために折り返した場合も同様です。警察官と約束した期日・時間に出頭すると、万引き事件に関する取り調べを受けることになります。
「取り調べを受ける=逮捕される」と連想する方は少なくないようです。しかし、警察の捜査は任意が原則で、逃亡や証拠隠滅の危険性があるなどの状況でなければ逮捕することはありません。したがって、出頭の求めに応じて素直に取り調べを受けている状況なら逮捕されるおそれは低いと考えてもよいでしょう。
3、電話を無視してしまった、その後はどうなる?
見知らぬ電話番号からの着信があったのでインターネットで検索してみると警察署の電話番号だった、といったケースでは、これから起きることを不安に感じて無視してしまう方もいるでしょう。
警察からの呼び出しの電話を無視していると、その後はどうなってしまうのでしょうか。
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(1)呼び出しは強制ではないので拒否できる
実のところ、警察からの出頭要請は強制ではありません。電話がかかってきても出ないからといって罪になることはなく、折り返しの連絡を入れる義務もないので、無視を続けることも可能です。
また、電話に出て出頭を求められても、警察署への出頭は拒否できます。ただし、次項のような状況に陥る可能性があります。 -
(2)無視・拒否を続けると逮捕の危険が増す
前述のとおり、警察からの呼び出しに必ず応じる義務はありません。しかし、無視・拒否を続けるのは賢明ではない、と断言できます。
なぜなら、連絡を無視し続けて取り調べに応じるかどうかの意思も確認できず、所在さえも明らかではない場合は、逮捕の要件である「逃亡または証拠隠滅を図るおそれ」に該当してしまうからです。
また、特別な事情もないのに出頭を拒んだり、期日の約束をしたのに断りもなく出頭しなかったりといった状況が続く場合も、同じ理由で逮捕の危険が増します。
警察からの連絡があり、電話に出られなかった場合は、あまり時間をおかずに自分から折り返しの連絡を入れたほうが安全です。「任意での取り調べに応じる姿勢がある」と判断されやすくなり、逮捕されない可能性が高まります。
仕事の都合や急用などで約束の期日に出頭できない場合も、必ず担当の警察官に一報しましょう。大切なのは、警察から「逃げるつもりではないか」「証拠隠滅をするのではないか」と疑われない姿勢を示すことです。
4、万引き容疑で取り調べられたあとはどうなる? 弁護士に相談すべき?
警察からの呼び出しに応じて万引き事件について取り調べを受けると、その後はどんな展開が待っているのでしょうか。
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(1)任意の在宅事件として処理される
警察からの呼び出しに素直に応じて取り調べを受ける限り、身柄は任意のままで逮捕されず「在宅事件」として処理されるのが一般的です。
逮捕されてしまうと、捜査の段階で最長23日間にわたる身柄拘束を受けることになります。他方、在宅事件として処理されれば、社会的な悪影響を大幅に抑えられるでしょう。
ただし、呼び出しに応じるからといって必ず在宅事件として処理されるわけではありません。複数の余罪がある、被害額が甚大におよぶといったケースでは、重大な刑事責任が発生することをおそれて逃亡を図るかもしれないと判断される危険があります。
不安なときは、警察から連絡が来た段階で弁護士に相談し、対応を依頼してください。弁護士が警察署に同行する、家族などが監督を誓約している意見書を提出するなどの対策を尽くせば、在宅事件として処理される可能性が高まるでしょう。
万引き事件では、すでに被害者との示談が成立していれば、事件を検察官へと送致せず警察限りで終結させる「微罪処分」として処理される可能性があります。
万が一、地方紙などで実名報道されてしまい、インターネット上に記事が公開されてしまった場合でも、弁護士に依頼していれば、早期に元記事の削除などの対応が可能です。日常やご家族が受ける可能性がある影響を最小限に抑えたいのであれば、弁護士のサポートは欠かせないといえるでしょう。 -
(2)検察官が起訴すれば刑事裁判になる
万引き事件を起こしたことが事実でも、必ず刑罰を科せられるわけではありません。刑罰を科せられるのは刑事裁判で有罪判決が下されたときだけです。
そして、刑事裁判を起こすか、それとも見送るかの判断は、検察官に委ねられています。
令和3年版「犯罪白書」によると、刑法に定められている罪を犯して検察官に起訴された人の割合は全体の37.4%でした。残る60%以上は不起訴、つまり「刑事裁判を起こさない」という選択がなされています。
検察官が不起訴処分を下す最大の理由は「起訴猶予」です。起訴猶予とは、証拠は十分で犯罪は証明されているものの、諸般の事情からあえて裁判を見送るという処分で、不起訴処分のおよそ7割を占めています。
万引き事件では、被害者への謝罪・弁済が尽くされている、本人が深く反省しているといった事情が配慮されるでしょう。やはり被害者との示談交渉は重要なので、弁護士のサポートは必須です。 -
(3)有罪判決を受けると刑罰が科せられる
万引きは窃盗として罪に問われ、刑事裁判で有罪判決が下されると、刑罰が科せられます。窃盗事件で有罪になったとき科せられる刑罰は、刑法第235条に定められているとおり、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。裁判官の判断次第では、懲役の実刑となって刑務所に収監されてしまうおそれがあるのです。
裁判官が刑罰の程度を判断する際は、犯行の動機や方法、悪質性、常習性、被害額の大小や謝罪・弁済の有無などが考慮されます。できるだけ重すぎる刑罰を科されたくないと望むなら、被害者との示談成立を示す示談書を裁判官に示す、動機や方法に悪質性はなく本人も深く反省しているといった状況を公判の場で主張するといった弁護活動が必要です。
できるだけ早く弁護士に相談して、処分の軽減や刑罰の回避に向けたサポートを求めましょう。
5、まとめ
万引き事件を起こすと、後日、警察から呼び出しの電話がかかってくることがあります。呼び出しの電話を無視し続けたり、特別な事情もないのに出頭を拒んだりしていると逮捕の危険が増すため、弁護士に相談してアドバイスを受けたうえで、真摯な姿勢で取り調べに臨みましょう。
万引き事件の多くは比較的に軽い処分で済まされる傾向があるものの、余罪が複数であったり、被害額が大きかったりすれば厳しい結果になることもあります。逮捕や厳しい刑罰を回避するには、弁護士のサポートが欠かせません。
万引き事件を起こしてしまい、警察からの電話にどうやって対応すればよいか悩んでいる、逮捕や刑罰に不安を抱えているといった方は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスにご相談ください。
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