財産分与の契約書の書き方とは? 作成したほうがよい理由と作成方法

2023年01月24日
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財産分与の契約書の書き方とは? 作成したほうがよい理由と作成方法

豊橋市が公表する「令和4年版 豊橋市統計書」によると、令和3年中に728件の離婚(届出の総数)がありました。また、「愛知県の人口動態統計」では、愛知県全体の離婚率(人口千体)は1.53、全国平均の離婚率は1.50となっているようです。

今まで過ごしてきたパートナーと離婚する場合、今後別々に生活をすることになるため、それまでの夫婦生活で得た財産を分けなくてはなりません。
これが「財産分与」と呼ばれる問題です。

財産分与にあたって、財産分与の契約書を作成すべきか悩まれている方、財産分与の契約書を作るメリットやどう書いたらよいのかわからない方も少なくないでしょう。

この記事では、財産分与の契約書に関して知っておくべき事柄について、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。

1、財産分与を行うとき契約書は必要?

離婚をする際に、財産分与についてお悩みの方は少なくありません。

本章では、そもそも財産分与とは何のために行うのかという解説から、契約書などの書面にする場合のメリット・デメリットをご説明します。

  1. (1)そもそも財産分与とは?

    財産分与とは、ごく簡単に言えば、夫婦が結婚し、離婚するまでの間に夫婦で作ってきた財産(夫婦共有財産といいます)を分けあうことをいいます。

    夫婦共有財産には、不動産、預貯金、自動車、株式、生命保険の解約返戻金など、夫婦で形成した財産が対象となります。

    一方で、夫婦が結婚前から有している財産は、夫婦の協力で作られた財産ではありませんので、財産分与の対象となる財産には含まれません。このような結婚生活とは無関係の夫婦の一方の財産は特有財産と言われます。

    また、財産分与は、含む要素ごとに分類して解説されるケースがあります。

    ● 清算的財産分与
    夫婦共有財産を分ける、基本的な財産分与のことを、一般的には、「清算的財産分与」と呼ばれています。どのように夫婦の共有財産を分けるかは、まずは夫婦の合意によって決めることができますので、必ずしも2分の1ずつの半分に分ける必要はありません。それぞれの夫婦の事情によって分けることが可能です。

    しかし、夫婦間で合意をすることができず、調停や審判などいった家庭裁判所の手続きに持ち込まれた場合には、原則として2分の1ずつ、分与することになります夫婦共有財産は夫婦の協力によって形成した財産であり、財産形成の寄与や貢献は平等であると考えられるからです

    このように2分の1ずつ分ける原則は「2分の1ルール」などと呼ばれています。

    ● 扶養的財産分与
    「扶養的財産分与」とは、清算的財産分与のほかに扶養的な要素を含ませた財産分与を指します。

    たとえば、結婚によって仕事を辞めて専業主婦(主夫)となった妻(または夫)は、離婚した場合には、すぐに経済的な自立ができないという状況になるケースは多いでしょう。この場合に、仕事をして経済力のある夫(または妻)から経済的な自立ができるまでの間に生活費を財産分与として捻出させるという考え方です。

    実務上は、経済的な格差が大きい場合で、清算的財産分与や離婚慰謝料などで生活費が十分といえないような場合に認められることが多い傾向があります。逆に言えば、ある程度の清算的財産分与や慰謝料が支払われるような場合には、扶養的財産分与としての支払いは認められないことが多いでしょう。

    ● 慰謝料的財産分与
    「慰謝料的財産分与」とは、他方が不法行為をした際、慰謝料の要素を含ませて財産分与を行うケースを指します。

    たとえば、片方の不貞行為により離婚に至った場合など、慰謝料を請求できることがあります。慰謝料は財産分与とは別に支払いを請求できるものですが、場合によっては、清算的財産分与に慰謝料分をプラスして財産分与を行うことがあります。このような扱いを行うとき、慰謝料的財産分与と呼ばれるケースが一般的です。したがって、すでに法的に適切と考えられる慰謝料を別に受け取っているケースでは、慰謝料的財産分与が認められることはありません。

  2. (2)財産分与を契約書にするメリット

    財産分与そのものは、必ずしも離婚協議書や契約書(合意書)のような形で書面に残す必要はありません。しかし、できる限り書面に残すことをおすすめします

    その理由としては、まず、口頭による合意だけでは、約束をした証拠となるものを残せません。そのため、簡単に約束を反故にされてしまう可能性があるためです。

    さらにもうひとつの理由として、財産分与は、どの財産を分けるのか、対象となる財産をどのように分けるのかなどを決めなくてならず、合意事項が複雑になることも多いためです。財産が預貯金だけであれば、比較的単純ですが、夫婦共有財産が多岐に渡る場合には、分与する対象となる財産自体に争いがあったり、財産に不動産などが含まれる場合には非常に複雑な分与方法で合意をしたりすることがあります。

    双方で合意した財産分与の内容が書面化されていない場合、合意した内容に認識違いが生じたり、後のトラブルになったりすることがあります。だからこそ、財産分与の合意内容を書面で明確にすることで、後のトラブルを回避できる可能性を高めることができるのです。

  3. (3)財産分与を契約書にするデメリット

    他方、財産分与を契約書にするデメリットをあえて挙げるとするのであれば、「一定の手間がかかること」のみ、といえるでしょう。

    前述したとおり、財産分与を契約書などの形にすることは財産分与の対象財産や分け方を明確にして後のトラブルを防止するというメリットがあります。したがって、対象財産が比較的単純で、即時に終了した財産分与であればよいのですが、後日支払いなどの場合においては、書面化しなければ、後のトラブルを引き起こす可能性が残ってしまいます。

    夫婦の財産をあえて書面にすることに抵抗をお持ちの方がおられるようです。心情的には理解はできなくはありませんが、契約書に残すことで問題が生じるようなケースはあまり想定できません。そもそも、信頼できなくなったからこそ離婚を選択した、というケースは少なくないでしょう。したがって、財産分与については、書面に残すメリットのほうが大きいため、特殊な事情がない限りは、契約書などの書面に残すことをおすすめします。

2、離婚協議書と財産分与契約書は違うもの? 作成方法とは?

離婚協議書とは、離婚の際に取り決めたことをすべて記載した書面です。他方、財産分与契約書は、決定した財産分与の内容について記述したものになります。

財産分与は、あくまで離婚が成立しなければ行われません。したがって、財産分与を書面とするタイミングは、離婚するタイミングとなるケースが多いでしょう。この場合、慰謝料があれば慰謝料や、子どもがいた場合には子どもの親権や養育費などの離婚の条件と同時に財産分与も「離婚協議書」のなかに記載されます。

もっとも、財産分与は、必ずしも離婚と同時にする必要はありません。多くの場合、連絡が取りにくくなる可能性が高いので離婚の前に話し合い決定したほうがよいですが、離婚後に取り決めることもできます。そのため、財産分与契約や財産分与合意書などといった形で、離婚後に作成されることもあるでしょう。

そして、財産分与では、そもそもどの財産を分けるのか、そして対象となる財産をどのように分けるのかを決めなくてなりません。
したがいまして、以下の2点が重要になります。

  • ① 財産分与の対象となる財産を漏らさずに記載すること
  • ② ①で対象となった財産の分与する方法・ルールを明確に記載すること


①については、対象財産に漏れがあった場合には、後に争うことが困難になりかねません。特に財産分与を受け取る側ですと、取得できたはずの財産が少なくなってしまうおそれがありますので、注意を要します。

②については、預貯金などの金銭のみであれば、誤りが生じることはそれほど多くはないとは思いますが、不動産や自動車などが対象財産となる場合や住宅ローンがある場合には、複雑な分与方法をすることがありますので、慎重な記載が求められます。

そして、①・②のいずれも、解釈の余地を残さないように明確な記載を心がける必要があります

3、公正証書にしておいたほうがよいケースとは?

財産分与に関する契約書を作成する場合に、公正証書にするべきかどうかという相談もよくいただきます。

公正証書とは、離婚の当事者間で作られる通常の協議離婚書や財産分与に関する契約書とは異なり、当事者の依頼によって公証役場において公証人の権限によって作成される書面をいいます。一定の料金がかかり、作成にも時間がかかることは間違いありません。

わざわざ時間やお金をかけて公正証書にするのは、大きなメリットが2つあります。ひとつめは、公的な書面となるので後日争いになったとき間違いのない証拠となり得ることです。公正証書は公証人が本人確認を行い、本人の意思を十分に確認し、慎重に作成するものです。したがって、「自分の意思が反映されていない」といったような合意内容を蒸し返すような主張は認められにくく、合意が無効となるような条項が作成されにくい点がひとつめのメリットといえます。

もうひとつは、公正証書へ「強制執行認諾文言」という条項にいれることによって、金銭債権について強制執行が可能となることが挙げられます。合意したとおりにお金が相手方から支払われないというケースは少なからず起こりえます。しかし、「強制執行認諾文言」がある公正証書を作成していれば相手方の財産を差し押さえることが可能になるのです。

強制執行は、通常は判決などの裁判所での手続きを行わなければできません。しかし、公正証書にすることで迅速に強制執行などの対応が行える点が、もっとも重要なメリットであるといえます。

4、弁護士から受けられるサポート

財産分与に関する書面(離婚協議書や財産分与契約書)を作成する場合、弁護士は広範に渡ったサポートを行えます。

● 財産分与の内容について
弁護士は、財産分与の内容に関するアドバイスを行うことができます。たとえば、どのような財産がそもそも財産分与の対象になるのかわからない場合や、どのように財産を分ければいいのか悩んでいる場合に、アドバイスを行うことが可能です。特に、財産が多岐に渡る場合や不動産ローンなどがある場合には、複雑になりますし、裁判所における実務も踏まえた知見が必要となります。

● 書面への落とし込みについて
財産分与の内容がまとまったとしても、それを的確に条項として書面に落とし込む必要があります。この場合にも、弁護士は、実務の経験を踏まえたアドバイスを行うことができるでしょう。もちろんアドバイスにとどまらず、書面の作成自体をお任せいただくことも可能です

● 相手方などとの交渉について
ご相談者様がさまざまな事情により、財産分与について相手方との協議をすることが難しい場合もあります。このような場合、相手方との交渉を弁護士にご依頼いただくことができます。また、公正証書とする場合には、公証人とのやり取りも弁護士に依頼することが可能です

5、まとめ

財産分与を契約書の形にする場合、どのような財産分与とするか、どのように書面を作成するか、相手方とどのように交渉するべきか、などといった点で、非常に難しく、悩ましい問題が多くあります。

弁護士はこれまでの判例や裁判所の実務も踏まて、財産分与の内容や書面の内容について効果的なアドバイスを行うとともに、相手方と交渉を行うことも可能です。

財産分与でお困りの際や心配ごとがある際は、離婚問題についての知見が豊富なベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスへぜひご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています