玉突き事故の過失割合は? 誰にどれだけ損害賠償請求できるのか
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豊橋市が公表する「交通事故発生状況」の統計資料によると、令和2年に豊橋市内で起きた交通事故発生件数のうち、人身事故は1652件、物損事故は9298件ありました。人身事故および物損事故のいずれについても、年間で相当数の交通事故が生じていることがわかります。
自動車同士の交通事故で、3台以上が関与する「玉突き事故」と呼ばれるものは、特に過失割合がどうなるのか疑問が生じてしまうものです。また、複数台の自動車が絡むだけに、損害賠償請求を誰にすればよいのかなどの不明点も出てくるでしょう。
今回は、このような玉突き事故が発生してしまったときの過失割合や損害賠償金請求のことなど、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。
1、玉突き事故の過失割合は?
玉突き事故の被害に遭ってしまった場合は、どのような過失割合になるのでしょうか。以下では、玉突き事故の基本的な事項と過失割合について説明します。
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(1)玉突き事故とは
玉突き事故とは、走行していた車両が前方の車両にぶつかり、その衝撃で押し出された車両がさらに前方にいた車両に衝突するような、連鎖的な事故のことです。過去には、高速道路などで10台以上の車両が絡むケースもありました。
このように、玉突き事故は3台以上の自動車が絡むために、過失割合や責任の所在が不明確になりやすいという特徴が挙げられます。 -
(2)玉突き事故の過失割合
玉突き事故の過失割合は、2台の追突事故での過失割合をベースに具体的な数値を決めていくのが一般的な方法です。
事故状況に応じた過失割合としては、以下に挙げる4つの例をご参考ください。なお、先頭で停車中の車をA車、2番目に停車中の車をB車、車両Bに追突した車をC車とします。
① 玉突き事故の基本の過失割合
基本的には、追突事故で追突された側の車両に過失はありません。追突した側の車両の前方不注視など、一方的な過失によって事故が発生したとみなされます。
たとえば、C車が停車中のB車に追突するケースだと、B車は被害を受けた側ということで過失割合は0になり、追突したC車が100になるのが一般的です。
C車の追突により、前に押し出されたB車が前方A車にぶつかって玉突き事故が発生しても、B車に過失はなかったものとされます。また当然ながら、衝突された先頭A車にも過失は認められません。
したがって、基本的な玉突き事故の過失割合は以下のようになります。- A車:0
- B車:0
- C車:100
② B車が理由もなしに急ブレーキをかけた場合
道路交通法24条では、危険防止のためにやむを得ない場合を除いた急ブレーキを禁止しています。
そのため、B車が理由なしに急ブレーキをかけたことにより玉突き事故が生じた場合には、Bにも一定の過失が認められる可能性があるでしょう。
この場合の一般的な過失割合は、以下のとおりです。- A車:0
- B車:30
- C車:70
③ B車がふらふら走行など不適切な運転をしていた場合
B車が走行中にふらついていたり、やみくもにブレーキを活用していたり、危険な運転をしていた場合は事故を招く要因であったと捉えることが可能です。そのため、追突したC車の過失割合が減算になることがあります。
この場合の一般的な過失割合としては、以下のとおりです。- A車:0
- B車:20
- C車:80
④ 高速道路での玉突き事故の場合
高速道路上で玉突き事故が発生するのは、主に渋滞などで停車中の前方車両に気付かずに後方車両が追突するというケースです。この場合、停車中のA車およびB車の過失は認められません。
一般道での玉突き事故と同様に、以下のような過失割合になるでしょう。- A車:0
- B車:0
- C車:100
これに対し、Bが前方不注視などでA車を発見するのが遅れ、急ブレーキをしたことで玉突き事故が発生した際は、一般道とはまた異なる過失割合が適用となります。
高速道路では、時速80キロメートルを超える高速度での走行が可能です。つまり、一般道とは比較にならないほど、急ブレーキによる危険が大きくなることは想像にたやすいのではないでしょうか。
そのため、理由のない急ブレーキをかけたBの過失割合は、以下のように大きくなります。- A車:0
- B車:50
- C車:50
2、損害賠償請求ができるものの内訳は?
玉突き事故の被害に遭った場合には、積極損害と消極損害、そして慰謝料などの費用を相手に請求することができます。それぞれの具体的な例を見ていきましょう。
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(1)積極損害
積極損害とは、交通事故が発生しなければ出費しなかったはずの費用のことです。たとえば、以下のような項目が積極損害として挙げられます。
① 治療費
実際に病院に行き、診察や治療を受けるときなどにかかった費用を請求することが可能です。治療を始めてから症状固定日までの費用のうち、必要かつ相当な金額が対象になります。
② 通院交通費
通院のために公共交通機関やタクシーなどの利用が必要であった場合には、その費用分を請求することができるでしょう。基本的には公共交通機関を利用したときの全負担額が認められますが、タクシー料金は利用する必要性があった場合に限られます。
また、通院の際に自家用車を利用した場合にも、実費(ガソリン代、高速道路料金、駐車料金)分を請求することが可能です。
③ 付添看護費、通院付添費
入院や通院に誰かの付き添いが必要であった場合には、付添看護費や通院付添費を請求することができます。付き添い自体の必要性については、年齢や怪我の様子、医師の見解などによって総合的に判断されることになるでしょう。
④ 雑費
怪我の内容や程度によっては、購入せざるを得なくなるものが出てくるケースがあります。そのような出費については、必要かつ相当なものであれば雑費として請求することが可能です。 -
(2)消極損害
消極損害とは、事故が起こらなければ被害者が将来的に得ていたであろうと考えられる利益喪失のことです。消極損害としては、以下のようなものが挙げられます。
① 休業損害
交通事故による怪我の治療のために仕事を休む場合、本来得られるはずであった収入が得られなくなるでしょう。このようなとき、想定される減収分を休業損害として請求することができます。
サラリーマンの場合には、会社に「休業損害証明書」の作成を依頼することが必要です。そして、その証明書をもとに欠勤期間分の減収額を請求することになります。
主婦などの家事従事者については、性別を問わず、一般的に女性の平均賃金を基準に休業損害を請求することが可能です。
② 逸失利益
交通事故によって後遺障害が生じると、それによって労働能力が低下してしまいます。そうして、本来得られるはずの収入が得られなくなってしまった場合には、逸失利益という損害賠償金を請求しましょう。
なお、逸失利益の計算式は以下のとおりです。事故前の基礎収入額×労働能力喪失率×労働喪失期間に基づくライプニッツ係数
労働能力喪失率は、後遺障害の等級でその割合が定められ、また、ライプニッツ係数についても同様に、労働能力喪失期間で数値が決められています。
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(3)慰謝料
慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金のことです。交通事故による慰謝料は、以下の2種類が存在しています。
① 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
傷害慰謝料とは、交通事故が原因で怪我をし、入通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
その金額は、怪我の内容や程度、通院日数、入院期間などによって算出します。
② 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故が原因で後遺障害が生じてしまったことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
後遺障害の内容や程度に応じて認定された後遺障害等級に従い、その金額が定められます。
3、誰に慰謝料を請求できるのか
玉突き事故に遭った場合、誰に対して慰謝料などの損害賠償を請求することができるのでしょうか。
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(1)追突車両の一方的な過失が認められる場合
A車、B車、C車による玉突き事故で、C車が100%の過失を負う場合には、事故の被害に遭ったAおよびBは、Cに対して損害賠償請求を行うことになります。
C車が追突してきたことでB車はA車に衝突していますが、Bに過失はありません。そのため、AはBに対しての慰謝料請求はできないのです。 -
(2)追突車両以外にも過失がある場合
A車、B車、C車による玉突き事故で、Bの理由ない急ブレーキが原因で事故が発生してしまった場合は、BとCの双方に過失があります。このとき、Aは誰に対して損害賠償の請求をすることができるのでしょうか。
この場合、BとCのどちらに対しても、Aは100%の全額の損害賠償請求をすることができます。Bの過失が30%、Cの過失が70%であったとしても、どちらか一方に全額請求したり、50%50%で請求したり、割合を変えることが可能です。
BとCの双方が自動車保険に加入している場合には、結論に差はありません。しかし、もし片方が自動車保険に加入していないようなときには、支払い能力のある方に請求するとよいでしょう。
4、弁護士に依頼することで賠償額が上がるケース
以下のようなケースでは、弁護士に依頼をすることによって賠償金が増額する可能性があります。そのため、事故が発生した場合はご自身で対応するのではなく、弁護士に依頼することがおすすめです。
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(1)慰謝料を請求するケース
交通事故の慰謝料を算定する基準には、以下の3種類があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
自賠責保険基準はもっとも金額が低くなることが多く、裁判所基準はもっとも高額になることが多い基準です。また、保険会社が提示する賠償額は任意保険基準で算定されますが、自賠責保険基準と同程度か、それに多少プラスした程度の慰謝料になることが多くなっています。
裁判所基準と他基準の算定金額を比較してみると、過去には2倍以上の差が生じるケースもありました。
実は、このような裁判所基準に基づいて示談交渉を行うことができるのは、弁護士が交渉を行う場合に限られます。被害者自身で交渉をしても、裁判所基準による慰謝料の支払いを受けることはできません。
そのため、適切な額の慰謝料を請求する場合には、弁護士に依頼をすることをおすすめします。 -
(2)後遺障害が生じたケース
後遺障害が生じた際には、その内容および程度によって後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が定められます。当然、重い障害が残った場合の方が賠償額は高額になります。
後遺障害によるケースで弁護士を依頼するメリットは、具体的な障害に応じた適切な後遺障害等級の認定を受けられるという点です。
後遺障害等級認定は、誰がやったとしても同じ結果になるというわけではなく、診断書の記載内容や検査方法などによって認定される等級が変わってくることもあります。
適切な等級の認定を受けることによって、最終的な賠償額も大きく異なってくるため、後遺障害等級認定の手続きは弁護士に依頼して行うことがおすすめです。
5、まとめ
玉突き事故が発生した場合には、責任の所在や過失割合が不明確になります。そのため、通常の交通事故に比べて対応が難しくなるケースも考えられるでしょう。
適切な過失割合を算定して、適切な賠償額を請求するには、交通事故の経験豊富な弁護士にサポートしてもらうことが必要不可欠です。
玉突き事故の被害でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスまでお気軽にご相談ください。
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