交通事故の被害届|出すメリット・デメリット、提出期限まで徹底解説

2025年06月12日
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交通事故の被害届|出すメリット・デメリット、提出期限まで徹底解説

令和5年に愛知県豊橋市内で発生した交通事故は1070件で、死傷者は1268名にのぼりました。

交通事故の被害に遭ったら、損害賠償請求に加えて被害届の提出も検討しましょう。被害届を提出すると、警察や検察による捜査が促され、事故相手の検挙に繋がる可能性があります。

本記事では交通事故の被害届について、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。


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1、交通事故の被害届とは

「被害届」とは、犯罪被害の内容を申告するため、警察官に対して提出する文書です

交通事故を起こして他人にけがを負わせる行為は、危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法第2条)や過失運転致死傷罪(同法第5条)などとして処罰の対象とされています。

そのため、人身事故(=被害者がけがをした交通事故)の被害者は、警察官に対して被害届を提出できます。自動車同士の事故のほか、自転車事故や歩行者との事故についても被害届を提出可能です。

これに対して物損事故の場合は、加害者に故意がない限り、被害届を提出することはできません

被害届を提出すると、警察に犯罪の発生を知らせることができます。被害届の提出をきっかけとして捜査が行われた結果、犯人の検挙に至る例が少なくありません。交通事故加害者の処罰を求めたいときは、被害届の提出を検討しましょう。

なお、交通事故の状況を警察官に報告することは、道路交通法によって義務付けられた手続きであって、被害届の提出とは異なる点にご注意ください

2、交通事故の被害届を出すメリットとデメリット

交通事故の被害について被害届を提出することには、メリットとデメリットの両面があります。両方の側面を総合的に考慮して、被害届を提出するかどうかを適切に判断しましょう。

  1. (1)交通事故の被害届を出すメリット

    交通事故の被害届を出すと、警察が捜査に動く可能性があります。交通事故加害者に処罰を受けさせたいときは、被害届を提出するのがよいでしょう
    警察が捜査に動くと、事故状況の捜査記録が作成されるため、弁護士は、警察の作成した資料も踏まえて加害者との交渉を行っていきます。過失割合に争いがある場合は、後の交渉に備えて被害届を提出し、捜査記録を残しておくこともメリットとなります。
    また、被害届を提出した後に示談交渉を行うと、加害者から被害届の取り下げを依頼され、その条件として示談金の増額などを提案されることがあります。加害者側の態度によっては、示談交渉を有利に進めるための材料として利用できることがある点も、被害届を提出することのメリットのひとつです。

  2. (2)交通事故の被害届を出すデメリット

    交通事故の被害届を提出すると、被害者は警察官や検察官に呼ばれて、参考人としての取調べを求められることがあります。取調べには時間がかかるので、特に忙しい方にとっては大きな負担になるでしょう。

    また、被害届を提出されたことに加害者側が反発して、示談交渉が難航することも懸念されます。実際に被害届を提出するのは、示談交渉における加害者側の反応を見てからにした方がいいかもしれません

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3、交通事故に関する被害届の提出方法

交通事故の被害届を提出する方法について、誰でも提出できるように分かりやすく解説します。

  1. (1)被害届の提出先

    交通事故の被害届は、警察官に対して提出します。

    警察官は、管轄区域の事件であるかどうかにかかわらず、被害届を受理しなければならないとされています(犯罪捜査規範第61条第1項)。

    したがって、交通事故の被害届はどの地域の警察官に対しても提出可能です。警察署や交番などに行って、警察官に対して被害届を提出したい旨を伝えましょう。

  2. (2)被害届の提出期限

    被害届の提出期限は、公訴時効期間が経過するまでです

    「公訴時効」とは、犯罪行為が終わった時から一定の期間が経過した場合には、検察官が被疑者を訴追できなくなる制度をいいます。

    たとえば、多くの交通事故について問題となる「過失運転致死傷罪」(自動車運転処罰法第5条)の公訴時効期間は、下表のとおりです(刑事訴訟法第250条第1項第3号、第2項第5号)。

    <過失運転致死傷罪の公訴時効期間>
    被害者が死亡した場合 10年
    被害者が負傷した場合 5年


    交通事故の直後に被害届を提出しなかった場合でも、公訴時効期間が経過していなければ、警察官に対して被害届を提出することができます。

    ただし、交通事故の発生から長い時間が経つと、事故現場の状況や証人の記憶が風化するなどして、警察による犯罪捜査が難しくなります。したがって、できる限り早い段階で被害届を提出することが望ましいでしょう

  3. (3)被害届の様式

    被害届を作成する際には、犯罪捜査規範の別記様式第6号を用います。被害届の様式は、警察署などで交付を受けることができます。

  4. (4)被害届に記載すべき事項

    交通事故に関する被害届の記載事項は、以下のとおりです。

    ① 宛先:提出先の警察署長名を記載します。
    (例)豊橋警察署長殿

    ② 日付:提出日の日付を記載します。
    (例)2024年10月1日

    ③ 届出人住居:被害届を提出する人の住所を記載します。
    (例)愛知県豊橋市……

    ④ 氏名:被害届を提出する人の氏名を記載します。
    (例)A山B郎

    ⑤ 電話:被害届を提出する人の電話番号を記載します。
    (例)080-XXXX-XXXX

    ⑥ 被害の種類:交通事故によって被害を受けた旨を記載します。
    (例)次のとおり交通事故被害がありましたからお届けします。

    ⑦ 被害者の住居、職業、氏名、年齢:被害者に関する情報を記載します。届出人自身が被害者である場合は、自分に関する情報を記載します。
    (例)愛知県豊橋市……、会社員、A山B郎、40歳

    ⑧ 被害の年月日時:交通事故が発生した日時を記載します。
    (例)2024年9月30日午後3時ごろ

    ⑨ 被害の場所:交通事故が発生した場所を記載します。
    (例)愛知県豊橋市……の○○交差点付近

    ⑩ 被害の模様:交通事故によって受けた被害の内容を具体的に記載します。
    (例)自動車を1人で運転していた際、交差点を青信号で直進しようとしたところ、交差道路から赤信号で加害車両が侵入してきて、側面衝突を受けた。車両側面が大破するとともに、首のあたりに衝突の強い衝撃が加わり、痛みが残った。医師の診断を受けたところ、頸椎捻挫(むちうち)と診断された。

4、交通事故の被害について弁護士に相談するメリット

交通事故の被害を受けた方は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。

  1. (1)損害賠償請求を代行してもらえる

    弁護士は、交通事故の損害賠償請求に必要な対応を代行いたします。

    まずは事故の状況を詳しくお伺いし、被害者が受けた損害を漏れなくリストアップした上で、適正な基準によって損害額を計算します。その上で、法的根拠に基づく請求を行い、最大限の損害賠償の獲得を目指します。

    被害者ご自身で対応する場合に比べて、労力が大幅に軽減されるほか、損害賠償の増額も期待できます。

    なお、ベリーベスト法律事務所では、加害者側との示談交渉・交通事故ADR・訴訟など、交通事故弁護における専門的な知識を要する手続きについても、対応が可能です。

  2. (2)被害届の提出についてもサポートしてもらえる

    交通事故加害者の処罰を求めたい場合には、被害届の提出についても弁護士がサポートいたします。

    警察に充実した捜査を行ってもらうためには、被害届において交通事故による被害の内容を具体的に記載し、かつその被害が重大なものであることをきちんと説明することが大切です

    弁護士は、被害届の記載方法をアドバイスするとともに、警察へ事故状況を正確に伝えるための添付書類についても準備をサポートいたします。

  3. (3)精神的な不安の解消に繋がる

    突然、交通事故の被害に遭えば、精神的にも不安定になるのは当然です。身体的な痛みに加えて、日常生活に支障が出ていることによる不安や、理不尽な出来事に対する怒りなどを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

    弁護士は、辛い状況にある交通事故被害者を支えるため、精神的にも寄り添いながら親身になってご対応いたします。

    交通事故被害について信頼できる専門家に相談することは、心の安定につながります。交通事故に遭って強いショックを受けている方は、ぜひお早めに弁護士へご相談ください。

5、まとめ

交通事故の被害に遭い、加害者を処罰してもらいたい場合は、警察官に対して被害届を提出しましょう。また、交通事故の被害者は、加害者側に対して損害賠償を請求することもできます。被害届の提出や損害賠償請求を行う際には、弁護士のサポートを受けるのが安心です。

ベリーベスト法律事務所は、交通事故に関する被害者のご相談を随時受け付けております。交通事故案件の実績がある弁護士が、お客さまのご状況に寄り添いながら、被害届の提出や損害賠償請求などを幅広くサポートいたします。

突然交通事故に遭ってしまい、辛い気持ちを抱えていらっしゃる方や、今後の対応の進め方などについて相談したい方は、ぜひお早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています