仮想通貨が含まれた相続はどう進める? 弁護士に相談すべきケース

2022年01月24日
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仮想通貨が含まれた相続はどう進める? 弁護士に相談すべきケース

愛知県豊橋市のデータによると、令和元年中における同市内の死亡数は3582人でした。出生数が2635人だったので、947人の自然減となっています。

仮想通貨(暗号資産)を所有して資産を運用していた方が亡くなった場合、仮想通貨(暗号資産)に関する相続が発生します。仮想通貨(暗号資産)の相続には、一般的な資産とは異なる特有の問題点が存在するので、弁護士に相談しながら適切な対応を行いましょう。

この記事では、仮想通貨(暗号資産)の相続に関する留意事項や手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「保健所/厚生統計」豊橋市)

1、仮想通貨(暗号資産)も相続の対象になる

仮想通貨(暗号資産)はここ数年で注目を集めてきた金融資産ですが、一般的な資産と同様に、相続の対象となります。

  1. (1)仮想通貨=暗号資産とは?

    ビットコインやイーサリアム、リップルなどに代表される「仮想通貨」は、ブロックチェーン上でやり取りされるデジタル資産です。以前から「仮想通貨」の名称で呼ばれていましたが、現行の法律上は「暗号資産」と称されています(資金決済法第2条第5項)。

    仮想通貨(暗号資産)が資産としての価値を社会的に認められるに連れて、数多くの仮想通貨取引所(暗号資産取引所)が設立されました。現在では世界中で、仮想通貨(暗号資産)の取引が行われ、その資産価値も全体的に高騰しています。

  2. (2)暗号資産は所有権の対象ではないが、一定の権利あり|相続の対象になる

    暗号資産は「有体物」(形のあるモノ)ではないので、民法上の所有権の客体にはなりません。しかし、仮想通貨取引所(暗号資産取引所)などを通じて取引ができるほか、その財産的価値もグローバルに認められつつある現状では、仮想通貨(暗号資産)を保有する人には、何らかの法律上の権利が認められるのは明白です。

    相続の対象は、相続開始(=死亡)の時点で、被相続人の財産に属した一切の権利義務です(民法第896条)。被相続人が死亡時点で仮想通貨(暗号資産)を保有していた場合、そこに被相続人の権利が認められる以上は、仮想通貨(暗号資産)も相続の対象になるものと解されます。

2、相続時に仮想通貨(暗号資産)の把握漏れがあった場合のリスク

亡くなった被相続人が、仮想通貨(暗号資産)を保有していることを親族に知らせていなかった場合、仮想通貨(暗号資産)の把握漏れが発生する可能性があります。

相続財産に含まれる仮想通貨(暗号資産)の把握漏れがあった場合、以下のリスクが生じ得るので要注意です。

  1. (1)後で相続人同士のもめ事が再燃する

    仮想通貨(暗号資産)の中には、現状かなり高額で取引されているものも存在します。

    遺産の分け方を遺産分割協議でいったん決めたとしても、後から高額の仮想通貨(暗号資産)が存在することが判明した場合、その分け方を巡って、相続人同士のもめ事が再燃する事態になりかねません。

    場合によっては、すでに行われた遺産分割のやり直しに発展する可能性もあり得るでしょう

  2. (2)予期せぬ多額の相続税が課される

    仮想通貨(暗号資産)は、相続税の課税対象になります。もし高額の仮想通貨(暗号資産)の存在が後から判明した場合、相続人に課される相続税の金額は跳ね上がってしまうかもしれません

    また、すでに相続税申告を済ませている場合、仮想通貨(暗号資産)に関する相続税について修正申告を行う必要が生じます。修正申告を行うことは、事務手続きとしても手間がかかりますし、加算税によって納税額が通常よりも増えてしまう点もデメリットです。

3、仮想通貨(暗号資産)の相続手続きの流れ

被相続人が仮想通貨(暗号資産)を保有していたことがうかがわれる場合には、以下の手順で相続手続きを行いましょう。

  1. (1)仮想通貨(暗号資産)を探索する

    まずは、被相続人が所有していた仮想通貨(暗号資産)を探す必要があります。

    仮想通貨(暗号資産)が存在する可能性があるのは、主に以下の場所です。

    ① 仮想通貨取引所(暗号資産取引所)
    一般的な証券口座などと似た形で、取引所のウォレットに仮想通貨(暗号資産)を保管している場合があります。
    暗号資産交換業者(かつての仮想通貨交換業者)に問い合わせれば、残高などを確認できます。ただし、日本の法規制が及ばない海外の取引所の場合は、探索が困難なケースが多いので要注意です。

    ② ウェブウォレット
    取引所以外のインターネット上のウォレットにて、仮想通貨(暗号資産)を保管しているケースがあります。
    金融庁の登録を受けた暗号資産交換業者と比べると、ウェブウォレットの運営業者は、相続手続きなどを十分に整備していないケースが多いので注意が必要です。

    ③ モバイルウォレット・ハードウェアウォレット
    スマートフォンや仮想通貨(暗号資産)保管用の専用端末において、仮想通貨(暗号資産)をローカル保管しているケースも考えられます。
    セキュリティ面で優れていますが、パスワード等が分からない場合は、仮想通貨(暗号資産)が取り出せなくなってしまいます。


    被相続人が仮想通貨(暗号資産)を当初購入する際には、暗号資産交換業者を介するのが一般的です。

    そのため、預貯金口座の入出金履歴などから、取引のあった暗号資産交換業者を突き止め、そこから仮想通貨(暗号資産)の送金履歴をたどっていくとよいでしょう

  2. (2)仮想通貨(暗号資産)の分割方法を相続人間で協議する

    相続財産中の仮想通貨(暗号資産)の全容が判明したら、相続人同士で遺産分割の方法を話し合います。

    不動産や預貯金などのほかの相続財産と併せて、できる限りすべての相続人が納得できる遺産分割方法を、話し合いの中で模索しましょう

  3. (3)暗号資産交換業者に相続手続きの申請を行う

    仮想通貨(暗号資産)を誰が相続するかが決まったら、暗号資産交換業者に対して、取引所に保管されている仮想通貨(暗号資産)の相続手続きを申請してください。個々の交換業者によって必要となる書類などは異なりますので、個別に確認する必要があります。

    相続手続きには、相続人全員の印鑑証明書や、遺産分割協議書などの提出が必要となります。暗号資産交換業者は、審査によって問題がないと判断した場合には、被相続人の口座を解約し、暗号資産を換金したうえで、相続人の銀行口座に出金を行ってくれます。

  4. (4)ウォレット内の仮想通貨(暗号資産)はどうする?

    ウェブウォレット・モバイルウォレット・ハードウェアウォレットなど、取引所のウォレット以外で保管されている仮想通貨(暗号資産)については、どのように利用・処分するかは相続人の判断に委ねられます。

    そのため、先ほど述べたとおり、すべての相続人が納得できる遺産分割方法を、話し合いの中で模索しましょう

4、仮想通貨(暗号資産)の相続を弁護士に相談した方がよいケース

仮想通貨(暗号資産)の相続にはトラブルが多いため、基本的には弁護士へのご相談をおすすめします。

特に以下のようなケースでは、すぐにでも弁護士へご相談ください。

  1. (1)仮想通貨(暗号資産)を探索する時間が取れない場合

    被相続人が保有していた仮想通貨(暗号資産)を探索するには、さまざまな手掛かりをたどる必要があります。そのため、探索にはある程度の時間を要しますが、仕事が忙しいなどの理由で、なかなか時間を確保できないという方もいらっしゃるでしょう。

    仮想通貨(暗号資産)の探索や遺産分割を行わずに放置していると、相続税申告の期限(相続開始を知った時から10か月後)が迫ってきてしまいます。余裕を持った相続税申告を行うためにも、早めに弁護士へご相談いただき、仮想通貨(暗号資産)の探索作業に着手しましょう

  2. (2)相続人同士が揉めている場合

    仮想通貨(暗号資産)を含めた遺産の分け方について、相続人同士が揉めてしまっている場合には、遺産分割協議の仲介を弁護士に依頼することをおすすめします。

    被相続人や遺産へのこだわりが強い場合、相続人同士の感情的な対立に発展し、冷静な話し合いができなくなることも少なくありません。

    弁護士に相談することで、もめ事のポイントを整理し、建設的に話し合いを進めることができ、結果的に遺産分割協議の妥結が早まる可能性が高いです

  3. (3)仮想通貨(暗号資産)に関する相続トラブルを予防したい場合

    仮想通貨(暗号資産)の相続については、トラブルが発生するケースも多いため、生前の段階で仮想通貨(暗号資産)の相続対策を行っておくことが望ましいです。

    仮想通貨(暗号資産)の保管先や残高をまとめておくだけでも、残される相続人にとってはかなり助かります。さらに、遺産分割における紛争を防止したい場合には、遺言書を作成して、仮想通貨(暗号資産)の承継者をあらかじめ決めておくことも有効でしょう。

    弁護士にご相談いただければ、このような仮想通貨(暗号資産)の相続対策についても、総合的な観点からアドバイスします

5、まとめ

仮想通貨(暗号資産)は、不動産や預貯金などの一般的な資産と同様に、相続の対象となります。

相続時に仮想通貨(暗号資産)の把握漏れが発生すると、相続人同士のトラブルに発展したり、相続税の追徴課税が発生したりするおそれがあるので要注意です。適宜弁護士にご相談のうえで、仮想通貨(暗号資産)の保管場所を突き止めましょう。

さらに、仮想通貨(暗号資産)の相続トラブルを防止する観点からは、生前の相続対策も非常に重要となります。仮想通貨(暗号資産)に関する相続対策を行う際にも、弁護士のサポートを受けることがおすすめです。

ベリーベスト法律事務所では、仮想通貨(暗号資産)を含む相続手続きについて、トラブルなく円滑に完了できるように、弁護士が中心となって尽力します。被相続人が仮想通貨(暗号資産)を保有していた可能性がある場合には、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています