遺言書があっても相続ができなくなる? すぐに不動産登記をすべき理由
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ご家族が亡くなり相続が発生した場合、遺言書に基づいて相続が行われることが多いのではないでしょうか。相続し、豊橋市内の土地を登記する場合は、名古屋法務局 豊橋支局で手続きが可能です。
しかし、令和元年、約40年ぶりに相続法が改正され、遺言書があったとしても相続できなくなるケースが発生することになりました。
なぜそのような事態が起きることになったのか、また、遺言書に基づいて不動産を相続したとき、早期に登記をしたほうがよい理由について、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士がご説明します。
1、遺言書があっても不動産を相続できなくなる理由
令和元年に施行された改正相続法では、時代の変化に合わせて多くの部分が見直されました。では具体的にどのような改正があり、今後の相続では何に気を付ければいいのでしょうか?
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(1)相続法改正の主なポイント
法律の中に「相続法」という法律はありません。しかし、民法の中で相続に関する部分を一般的に「相続法」と呼んでいます。
- 配偶者居住権の新設
- 持ち戻し免除の意思表示の推定
- 遺産分割前の預貯金払戻制度の新設
- 遺留分制度の見直し
- 自筆証書遺言の要件緩和
- 自筆証書遺言の法務局での保管制度の新設
- 被相続人に寄与した人にも金銭
- 相続の効力等の見直し
遺言書があっても相続できなくなるケースが発生する理由は、改正相続法の中でも相続人への影響が大きいとみられる「相続の効力等の見直し」にあります。
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(2)第三者の不利益が問題視されていた
なぜ、「相続の効力等の見直し」が行われることになったのか、背景について知っておきましょう。
相続が発生した場合、被相続人の名義の不動産を、それを相続した相続人名義に変更します。この手続きを「相続登記」といいます。相続登記は義務ではなく、手続きに期限もありません。そのため、不動産を相続しても登記しないケースが少なくありませんでした。
これまでは遺言書が非常に重要視されていたため、たとえ第三者がその不動産を登記してしまったとしても、遺言書に基づく相続であれば「自分のものだ」と主張できました。そのため、登記しなくても第三者のものとなることはなかったのです。
しかし、登記をした第三者からすれば「まさか」の事態といえます。そもそも第三者は相続人ではないため、遺言書の内容を知らない場合が多いためです。
登記をした第三者にとっては、別の相続人からその不動産の売却を受け、問題なく購入・登記ができたと思っていたことでしょう。しかし、実際には手に入らないという不測の事態が起こり、大きな不利益を受けることになっていました。
このようなケースがあったため、遺言書があれば登記をしなくても所有を主張できる自体についてはたびたび問題視されていたのです。 -
(3)遺言書より登記を優先
そこで、相続法改正によって、この第三者への権利の主張については、民法第899条の2において次のように規定されました。
「相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない」
つまり、法定相続分を超えた部分については、第三者よりも先に登記や登録をして名義を変更しなければ、第三者に「自分のものだ」と権利を主張できないということです。
結果、遺言書よりも、相続登記の先・後が優先されることになりました。これまでのように登記を怠っていると、第三者に登先に記され、遺産が減ってしまう可能性があります。
なおこれは遺言書だけでなく、遺産分割協議により法定相続分以上の相続をした場合も同様です。 -
(4)対象はあくまで法定相続分を超えた部分のみ
注意してほしいのは、この規定はあくまで「法定相続分を超えた部分についてのみ適用される」ということです。法定相続分を超えていない部分については、今まで通り権利を主張できます。
この規定は不動産ではなく、法定相続分以上の債権(銀行預金など)を相続した場合にも有効です。その場合、権利を主張するためには金融機関などの債務者への通知が必要です。
2、遺言書があっても相続できない具体的なケース
法改正により、今後は原則として「登記 > 遺言書」となります。では今までとはどのように違ってくるのが、具体例でご紹介します。
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(1)ケース1:第三者が先に購入・登記
被相続人:母親
相続人:長女、次女
母親が「マンションはすべて長女に残す」という内容の遺言書を残して亡くなりました。マンションは複数あり、長女は不動産の名義変更を忘れていました。そこで次女は自分の法定相続分である2分の1にあたるマンションを長女に内緒で登記し、その後第三者に売却。第三者はすぐに登記をしました。
法改正前であれば、第三者が先に登記をしたとしても遺言書が優先されるため、マンションは長女のものとなりました。何も知らない第三者にとっては不満が大きいことでしょう。
しかし、法改正がされた今、登記が遅れたために長女は第三者に対抗できません。法定相続分を超えたマンションについては登記が優先されて第三者のものとなります。 -
(2)ケース2:第三者が先に差し押さえ
被相続人:父親
相続人:長男、次男
父親が「財産はすべて長男に渡す」という遺言書を残して亡くなりました。父親には借金がありました。「長男・次男は法定相続分で相続する」と思っていた債権者は、回収のため長男が相続登記する前に父親名義の土地を差し押さえました。
長男がすべての遺産を相続するとなれば、次男の相続分はありません。これまでは遺言書が優先されていたため、債権者が長男の登記より先に差し押さえをしたとしても土地は長男のものとなりました。
そのため遺言書の内容を知らない債権者が、土地から次男の法定相続分である2分の1を回収しようとしても、土地はすべて長男ものであるため、そこから次男の分を回収することはできず、不利益を受けていたのです。
ところが法改正により、長男が登記するよりも先に債権者が差し押さえをすると、法定相続分を超えた土地については差し押さえが有効と判断されるようになりました。
3、早めが大事! 相続登記の流れ
今後の相続においては、スピーディーな相続登記がより重要となってきます。しかし、相続登記は身近な手続きとはいいがたいものです。ここでは手続きの大まかな流れをご説明します。
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(1)相続発生から登記までの流れ
被相続人が亡くなり相続が発生した場合、次のような流れで相続の手続きを進めます。
- 遺言書の確認、家庭裁判所での検認手続き
- 相続人の確定
- 財産の確認
- 遺産分割協議
- 必要書類の準備
- 登記手続き
なお遺言書が公正証書遺言の場合、検認は不要です。
また遺産分割協議は遺言の内容に納得できなかったり、遺言が残っていないまたは不備があったりした場合にのみ行います。遺言書通りに相続する場合には不要です。
相続人が複数いる可能性がある、スムーズに話し合いをすることが難しいなど、遺産分割協議がまとまらないケースは、相続対象となる財産の過多に限らずたびたび発生します。もめごとが深刻になる前に、弁護士に相談しておくことをおすすめします。 -
(2)相続登記の必要書類と費用
具体的な分割方法が決まったら、できるだけ早く相続登記を行いましょう。
まずは次のような書類を準備してください。
- 登記申請書
- 被相続人の戸籍謄本、住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本、住民票
- 固定資産評価証明書
- 登録免許税の収入印紙
遺言や遺産分割協議に基づき相続する場合は、次の書類も準備します。
- 遺言書または遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
なお不動産の相続登記には登録免許税を支払う必要があります。税額は固定資産評価額の0.4%ですので、その分の収入印紙を準備しておきましょう。
そのほか戸籍謄本や住民票などの取得費用、専門家に手続きを依頼する場合にはその費用もかかります。 -
(3)法務局への申請方法
相続登記は法務局に申請します。
申請には次の3つの方法がありますので、必要書類・費用の準備ができたら、できるだけ早めに手続きしましょう。
- 法務局の窓口
- 郵送
- オンライン
申請は原則として相続人全員で行う必要があります。ただし委任状を用いてひとりの相続人に委任することも可能です。
登記完了までにかかる期間は、一般的に1〜2週間ほどとされています。登記が終わると法務局から「登記識別情報通知」という書類が発行されます。今後不動産の売却をする際に必要ですので、しっかりと保管しておきましょう。 -
(4)複雑な登記手続きは弁護士に任せよう
相続登記に限らず、相続に関係する手続きは非情に複雑で、かつ、相続税などのことを考慮すると、できるだけ早期に対応する必要があります。
早く登記を行いたくても相続人の足並みがそろわないなどのケースもあり、初めての方がひとりで行うことは簡単ではないでしょう。そもそも相続は相続人同士でもめてしまうことが多く、遺言書があっても、遺産分割協議をしても、話がまとまらないことは少なくありません。
そのため相続関連の知見が豊富な弁護士に一度相談してみることをおすすめします。トラブルとなるリスクを回避するためのアドバイスが可能です。
弁護士に協議の時点から対応を任せれば、相続資産の洗い出しから相続人の確定、遺産分割協議のサポートをはじめ、相続に関係する困りごとの解決を目指すことができます。ストレスを抑えてスムーズに相続が進められるでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、他士業と連携を取り、協議などのサポートだけでなく、財産確認から書類作成、登記申請、相続税申告まで全面的にサポートすることが可能です。まずはお気軽にご相談ください。
4、まとめ
相続については、ご自身が当事者になって初めてどうすべきか調べるケースもあり、相続法の改正についてあまり深く知らない方が少なくないようです。しかし、知らなかったからといっても、登記が優先されることには変わりはありません。場合によっては、せっかく故人が残してくれた財産が減ってしまうなど、大きな不利益を受ける可能性があります。
そのため相続が発生したらすぐに、弁護士に相談することをおすすめします。ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士は、相続に関するトラブルや悩み解決のお手伝いが可能です。相続には期限がある手続きも多くスピーディーな対応が必要ですので、できるだけ早くご連絡ください。
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