示談交渉の進め方|注意点や弁護士に相談するメリット

2025年06月02日
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示談交渉の進め方|注意点や弁護士に相談するメリット

愛知県警察の統計によると、令和5年における愛知県内の刑法犯(※)の認知件数は、4万6832件で検挙件数は1万5582件でした。令和3年の認知件数は3万7832件、令和4年は4万1248件であり、認知された刑事事件の総数はやや増加傾向にあることがわかります。

身近な家族が刑事事件を起こしてしまい、どのように示談交渉を進めるべきか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。刑事事件を起こした際に重い罪を避けるためには、逮捕前・起訴前に示談を成立させることが重要です。

今回の記事では、示談交渉の概要や進め方・注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。

※刑法犯とは、殺人・傷害・強盗・放火・窃盗・詐欺などの主に刑法にもとづいて処罰される犯罪(刑事事件)です。
出典:「犯罪の発生・検挙状況(刑法犯認知・検挙状況)」(愛知県警察)


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1、示談交渉とは?

示談交渉とは、事件や事故の被害者と加害者が、話し合いで問題の解決を目指すことです

犯罪行為・不法行為などによって損害や精神的苦痛を受けた被害者は、加害者に対して損害賠償請求ができます。裁判所を通さずに当事者同士で損害賠償の内容や金額を決定できるのが、示談交渉の特徴です。

被害者がいる刑事事件では、示談交渉の結果がその後の刑事手続きや刑事処分に大きく影響を与える可能性があります。

示談が成立したからといっても、必ずしも刑事処分を免れるわけではありません。しかし、重罪となるリスクを軽減するには、被害者との示談を成立させることが重要となります。

2、示談交渉の進め方

被害者との示談交渉について、特に問題となる刑事事件においてどのように進めればいいのでしょうか? 以下では、一般的な示談交渉の進め方について解説していきます。

  1. (1)被害者と連絡を取る

    示談交渉の第一歩は、被害者と連絡を取ることです。

    ただし、刑事事件の場合、加害者側から被害者に連絡を取ろうとしても、二次被害防止の観点から個人情報が開示されることはありません。そもそも逮捕・勾留により身柄が拘束されている場合は、加害者本人から連絡することは不可能です。
    また、被害者側は直接加害者本人や加害者家族から連絡された場合、嫌悪感を示す可能性が高いという問題もあります。

    そのため、まずは弁護士に依頼し、弁護士を通じて警察や検察に問い合わせを行いましょう。謝罪の意思を伝え、被害者から承諾を得られれば、氏名や住所・電話番号などの情報提供を受けられるため、連絡が取れるようになります。

  2. (2)示談条件を交渉する

    被害者が示談に応じる意向を示した場合、次のステップは示談条件の交渉です。示談交渉では、主に以下のような条件を決めていきます。

    • 慰謝料や賠償金を含めた示談金の金額
    • 支払い方法と期限
    • 告訴の取り消しや被害届の取り下げをするかどうか
    • 宥恕(ゆうじょ)条項:被害者が加害者を許し、刑事処罰を求めない意思を示すもの
    • 清算条項:示談内容以外に債権や債務が存在しないことを確認するもの


    刑事事件の示談交渉では、加害者と被害者が対面せずに弁護士を介して交渉を進めていくのが一般的です。しかし、加害者から直接謝罪を受けたいと要望がある場合など、対面して謝罪することが条件に含まれるケースもあります。

  3. (3)示談書を作成する

    示談条件について当事者双方が合意したら、その内容を記載した示談書を作成します。示談書の作成は、合意内容を明確にするだけでなく、思い違いなどによる将来的なトラブルを防ぐためにも重要です。

    示談書には示談条件のほか事件の詳細や当事者の情報などを記載し、当事者双方が署名捺印をします。弁護士を依頼している場合は、弁護士が署名押印するため、原則として、加害者本人が署名捺印しなくても示談することが可能です。
    一度成立した示談は原則として取り消しや撤回ができないため、示談条項の決定は慎重に行いましょう

  4. (4)示談金の支払い

    示談成立後は、合意した内容に沿って期日までに示談金の支払いを行います。

    支払い方法としては、銀行振込や現金の手渡しが一般的です。示談条件によっては分割支払いも可能ですが、被害者にできる限りの誠意を示すという意味でも一括払いにしたほうがよいとされています。

    そして、示談金を支払った証拠を残すためにも、振込明細書や領収証を控えておくことを忘れないようにしましょう。

  5. (5)示談書の提出

    加害者および被害者の署名捺印がされた示談書を作成したら、コピーを適切な機関に提出します。示談書の提出先は起訴前であれば検察、起訴後の場合は裁判所です。

    示談書の提出によって、被害者側との示談の成立を証明できるため、刑事手続きにおいて不利な結果を避けられる可能性があります。

    すでに示談金の支払いが済んでいる場合は、振込明細書や領収証のコピーもあわせて提出しましょう。

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3、示談交渉の注意点

刑事事件の示談交渉はその後の処分にかかわるため、慎重な対応が求められます。示談交渉での注意点は、以下のとおりです。

  1. (1)逮捕前や起訴前に示談を成立させることが重要

    刑事事件の示談交渉は、逮捕前や起訴前に成立させることが重要です。その理由は、刑事事件手続きの進行状況に応じて、示談成立の影響力が変わるためです。

    たとえば、逮捕前に示談が成立していれば警察側が「被害者側はすでに許している」と判断し、逮捕されない可能性が高まります。また、起訴前に示談が成立していれば、検察官の判断に影響し不起訴処分となる場合があります。

  2. (2)弁護士以外の人が示談交渉する場合は報酬を与えてはいけない

    被害者との示談交渉は、家族や友人など別の人に依頼することも可能です。ただし、弁護士以外の人に報酬を与えて示談交渉させる行為は法律で禁止されています

    弁護士資格をもっていない人が報酬を受けて示談交渉することを、「非弁行為」といいます。非弁行為には2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されるため、他者に依頼する際は報酬を与えないようにしてください。

    また、弁護士以外の人が示談交渉を行うと、被害者に不快感を与えたり不備がある示談書を作成されたりするリスクもあります。適切な手続きを行うためにも、示談交渉の代行はできる限り弁護士に依頼するようにしましょう。

  3. (3)示談書に宥恕(ゆうじょ)条項や清算条項を含める

    示談交渉にあたる際は、宥恕(ゆうじょ)条項や清算条項について合意を取り示談書に明記しましょう。

    宥恕(ゆうじょ)条項は、刑事上の処分や処罰を軽減させるために重要です。また清算条項は、示談後に金銭トラブルが発生するリスクを軽減できます。

    認識の違いによるトラブルを防ぐためにも、示談書にはこれらの条項を含めることが望ましいです。

4、示談交渉を弁護士に相談するべき理由

刑事事件の示談交渉を適切に進めたい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談するべき理由について、以下で具体的に解説していきます。

  1. (1)不当に重い罪となる可能性を低くできる

    弁護士に示談交渉を依頼することで、不当に重い処分がされる可能性を低くできます。刑事事件では、被害者との示談が成立していることで、量刑が軽減されるケースがあるためです。

    弁護士は、過去の裁判例などにもとづいた示談内容を提案し、被害者の納得を得られるように交渉を進めます。また、警察や検察に対して示談で合意した内容を的確に伝え、不起訴処分や量刑の軽減を目指せます。

    刑事事件は時間の経過によって状況が悪化してしまう場合があるため、できるだけ早い段階で弁護士へ相談しましょう。

  2. (2)接見ができる

    弁護士は、逮捕後や勾留中に接見ができます。接見とは、身柄拘束されている被疑者が、施設内で外部の人と面会することです。

    逮捕されて身柄拘束を受けている場合には、家族や友人などとの面会は基本的にできません。また、逮捕後の勾留が決定した後も、接見禁止命令が出された場合は面会できなくなります。

    弁護士に依頼していれば接見禁止中にも示談交渉の進捗を聞いたり、正確な情報を確認したりできるため不安の解消につながります。

  3. (3)刑事手続きについてアドバイスができる

    刑事手続きについてアドバイスが可能な点も、弁護士に相談するメリットのひとつです。弁護士は示談交渉だけでなく、刑事手続き全般について適切なアドバイスができます。

    たとえば、逮捕後の流れや起訴の可能性・裁判の進め方などをわかりやすく説明し、今後の対応を具体的に提案します。また、依頼者の利益を守るための刑事弁護活動を行い、権利の侵害を防ぐことも可能です。

    法的知識や経験をもつ弁護士のサポートを受ければ、安心して手続きを進められるでしょう。

5、まとめ

示談交渉とは、加害者と被害者が和解するための手続きであり、示談成立による直接の効果は民事上の和解ですが、示談が成立しているか否かは、刑事事件の処分や量刑の判断に関して重大な影響があります。

示談交渉の方法を誤ると、事態を悪化させるリスクがあります。そのため、被害者の心情にも配慮し、適切なタイミングで進めていくことが重要です。

弁護士に相談すれば、示談交渉の代行だけでなく、不当に重い処分や刑罰を科されるリスクを軽減する刑事弁護活動が受けられます。刑事事件の示談交渉でお困りの場合は、お早めにベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています