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振替休日が月をまたぐ場合の正しい処理と注意点

2022年09月20日
  • 労働問題
  • 振替休日
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振替休日が月をまたぐ場合の正しい処理と注意点

愛知県の県民生活部統計課が公表する「令和3年経済センサス 基礎調査結果」の資料によると、愛知県には29万5277もの民営事業所があるそうです。そのうち、豊橋市は1万4080の民営事業所があり、愛知県内では3番目(4.8%を占める割合)に位置しています。

企業の数があるだけ、労務管理についての悩みも存在すると言っても過言ではないでしょう。特に、給与計算や勤怠管理は間違いがあってはならないからこそ、悩みの種となっている方もいるかもしれません。

今回は、従業員の振替休日が月をまたぐ場合の対処方法や注意点について、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説いたします。月またぎでの振替休日は、通常のケースとは異なる対応が必要となるため、しっかりと確認していきましょう。

1、振替休日が「月またぎ」になるケースとは

従業員が振替休日を取るのに、どうしても翌月にならざるを得ない場合があるでしょう。このように、月をまたいで取得される振替休日を「月またぎ」という言葉で表現することがあります。以下では、振替休日の定義や月またぎの振替休日が問題になるケースをご説明します。

  1. (1)振替休日の定義とは

    振替休日とは、本来は休みである日を従業員が前もって労働日に設定し、代わりに他の労働日を休みとすることです。対して、事前に休日と労働日の入替を設定せずに休日働くことを、休日出勤と言います。

    振替休日はもともとの休日である日に従業員が働くことになっても、休日出勤とは異なり、事前に休みを稼働日にすることが設定されることで、勤務日での就業という扱いになります。そのため、休日出勤を行ったときのように、従業員に対する割増賃金の支払いは発生しません。

    ただし、詳しくは後述しますが、休日の稼働により、従業員のその週の労働が法定労働時間(40時間)を超えた場合は、その分の割増賃金を支払わなければならない点に注意しましょう。

  2. (2)月またぎの振替休日で問題になるケース

    月またぎの振替休日が問題になるのは、給与計算の期間をまたいで振替休日を取る場合(振替勤務を行った月の給与の締め日よりも後に休みを取る場合)です。

    たとえば、給与の締め日が毎月月末締めの会社で、従業員が3月10日に出勤した際、その振替休日を4月10日に取得するというようなケースには気を付けなければなりません。締め日が関与する振替休日は、賃金の処理の行い方が通常と異なるからです。

    なお、労働基準法では、「振替休日は勤務日から1か月以内に取得しなければならない」というような、具体的な期間の制限は明確に決められていません。しかし、基本的には労働基準法115条にしたがい、2年が時効になると考えられています。つまり、従業員が振替休日を月またぎで取得しても違法性はなく、仮に振替とする休日が、勤務日よりも前であったとしても問題ありません。

    ただし、厚生労働省の通達によると、振替休日の取得は「勤務日以降、できる限りの近接日が望ましい」とされています。実際に、賃金の管理・従業員の健康管理の観点からも、可能なら近いうちに取得してもらうと良いでしょう。

2、月またぎになった場合の適切な処理手順

従業員の振替休日が月またぎとなった場合は、賃金の処理手順がどのようになるかを、注意点とともにご説明いたします。

  1. (1)従業員の出勤分の賃金を支払う

    従業員が振替として働いた日以降に振替休日を取ることが予定されているとき、「出勤分の賃金と振替休日分の差し引きがゼロになるから、通常と異なる賃金対応は行わなくて良い」と考えている方は注意が必要です。
    この算定方法では、振替休日の月またぎがあるケースだと違法になってしまいます。

    月またぎの場合には、給与の算定期間中に勤務がされている以上、従業員のその出勤で稼働した分の賃金はいったん支払う必要があるのです。同一の賃金算定期間、実際には従業員が振替休日を取っていないため、控除することはできません。

    これは、労働基準法第24条第1項の全額払いの原則というルールのもと、定められています。

  2. (2)従業員が振替休日を取ってから控除する

    勤務分の給与はその算定期間中にいったん支払ったうえで、実際に休日を取った日の算定期間で休日分の賃金を控除する対応が必要です。

    給与が毎月月末締めの会社を例に考えてみましょう。
    従業員が3月10日に出勤し、その振替休日を4月10日に取得というケースでは、まず3月分の給与で3月10日の出勤分を加味して支払います。そして、4月分の給与から4月10日の休日取得分を控除するということになります。

  3. (3)割増賃金に注意

    給与の締め日をまたぐケースでの振替休日は、割増賃金に関しても注意が必要です。

    前述のとおり、振替休日は前もって休日を出勤日と交換すると休日出勤の扱いにはならず、休日手当を支給することはありません。もっとも、それ以外の割増賃金については配慮が必要です。

    法定労働時間は週40時間以内、かつ、1日8時間以内が原則となるため(労働基準法第32条)、従業員がこの時間を超えて労働を行うと、その分の割増賃金が発生します。
    給与を算定する際は法定労働時間と実働時間を照らし合わせて、割増賃金が加算となるかどうかを確認しましょう。

  4. (4)36協定の締結

    従業員が月またぎで振替休日を取るとなったら、労働基準法で規定されたルールの週40時間以内、かつ、1日8時間の法定労働時間を超過してしまうことも少なくないでしょう。

    このような法定労働時間を超えて勤務させるためには、「時間外・休日労働に関する協定届」、通称36(さぶろく)協定の締結が必ず必要となります。このような36協定の締結を行っていないにもかかわらず、法定労働時間を超えて労働をさせてしまった場合は違法となってしまうため、ご注意ください。

  5. (5)就業規則の定めと振替休日の特定

    そもそも従業員に対し、振替休日を命じる際には、振替休日に関する定めを就業規則として設ける必要があります。月またぎに限ったケースではありませんが、見落としがちなポイントであるため、就業規則で振替休日について制定されているかをチェックしてください。

    実際の裁判例では、就業規則などに業務上の必要性によって振替休日を行うことがある旨の規定が設けられるなど労働契約上の根拠があり、かつ、振替休日後に、毎週少なくとも1回の休日か、特定の4週間における4日以上の休日が維持される限りは、使用者(雇用主や経営者など)は振替休日を命じることができると判断しています(横浜地方裁判所昭和55年3月28日判決)。

    さらに、休日出勤の代償として別日に休みを与えても、前もって休日を指定していないということになるため、振替休日とはなりません。この場合には、後述する「代休」の扱いとなるため、単なる休日出勤を行ったものとして休日手当を支払う必要があります。

3、月またぎを避けるために振替休日を取得させないのは違法?

振替休日を月またぎで取得されることは、従業員の賃金計算や配慮するべき注意事項も多く、なるべく避けたいところです。その対策として、月またぎを避けるために振替休日を取らせないとしたら、それは違法になるのでしょうか。

前述のとおり、就業規則内に根拠があれば、業務の必要に応じて従業員に振替休日を命じることは可能である一方で、その義務があるものでありません。つまり、振替休日を取らせることなく、休日出勤扱いにすることもできるということです。
このように、休日に働いてもらうために振替休日という形を取るかどうかは、会社の任意の判断に委ねられている事項であって違法とはならないのです。

もちろん、休日出勤が発生する際には、従業員への休日手当や労働時間、健康管理などには十分に配慮する必要があることは忘れないようにしましょう。

4、振替休日と代休の違いも正しく把握しておきたい

振替休日と似て非なるものに、代休があります。振替休日のことを正しく理解するためにも、代休との違いを理解しておくことは重要です。

  1. (1)代休とは

    代休は、従業員が休日に労働が行った代わりに、別の労働日を休みにすることを言います。

    振替休日とは違って、前もって休日と労働日の変更を行わずに休日を取得することになるため、従業員は休日出勤を行っていることになります。したがいまして、代休の場合には休日手当を支払うことになるのです。

  2. (2)就業規則の定め

    代休を取得すること自体について、特に法令上の規制はありません。そのため、代休取得の制度が就業規則などで制定されずとも、従業員の代休取得は違法になるものではありません。

    事実、就業規則などによって、従業員が希望する日に代休の取得を可能とすることを制度として設けている企業もあれば、設けていない企業もあります。

  3. (3)代休の注意点

    場合によっては、従業員の代休取得方法が労働基準法に反してしまうこともある点に注意が必要です。

    たとえば、従業員の休日出勤が頻発し、以下のとおり、労働基準法で定められている基準に基づく休日が取得されなかったとすると、法律違反となってしまいます。

    労働基準法 第35条 第1項、第2項
    使用者(雇用主や経営者など)は、従業員に対して、毎週少なくとも1回は休日を与えなくてはならない。または、特定の4週間に4日以上の休日を与えることでも可能。


    したがって、振替休日と異なり、就業規則に代休取得の制度がなくとも違法にはなりませんが、上記のような労働基準法上の規制に反することがないようにしましょう。

    また、代休取得時の割増賃金の算定も複雑になることに留意してください。

5、まとめ

振替休日が月またぎとなるケースでは、その従業員の賃金の算定をめぐって、通常とは異なる計算が必要です。割増賃金が発生するような場合には、さらに複雑なものとなります。

また、そもそも振替休日を命じる場合には就業規則に根拠が必要となりますので、就業規則の確認もしなければなりません。振替休日と似ている制度として代休がありますが、代休の場合にも検討事項は多くあり、会社としてのルールを整える必要があります。

このような振替休日や代休のことに関連せずとも、就業規則の見直しや社内制度についてお悩みがある場合には、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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