0120-353-048

平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

メールでのお問い合わせ 24時間・365日受付
メニュー メニュー

業務命令を拒否できる正当な理由とは? 拒否するとどうなる?

2022年11月15日
  • その他
  • 業務命令
  • 拒否
  • 正当な理由
業務命令を拒否できる正当な理由とは? 拒否するとどうなる?

愛知県では、労働問題について、あいち労働総合支援フロア労働相談コーナーや県民事務所などの労働相談員(県職員)が、電話または面談による無料相談を受け付けています。

「業務命令が下されたら、必ず従わなければならないのだろうか」と、疑問に感じている労働者の方も多いでしょう。たしかに、労働契約上の義務として、労働者は業務命令に従わなければなりませんが、その業務命令の内容が違法・不当だった場合は、命令遂行の拒否を認められることがあります。

経営者や役員などの使用者から下された業務命令に納得できないときには、拒否することができる正当な理由をしっかりとおさえた上で対応することが大切です。今回は、業務命令を拒否することができる正当な理由や拒否した際の処遇について、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。

1、業務命令とは? 拒否することは許される?

最初に、業務命令とは具体的にどのようなものか、また、業務命令を拒否することが許されない理由とは何なのかを説明します。

  1. (1)業務命令とは

    業務命令とは、使用者が労働者に対して発する命令のことです。使用者は、会社内で経営者側の立場にいる人のことをいい、部長や課長などの管理職が業務命令権を有しています。

    業務命令には、さまざまなものがありますが、以下のものが代表的な業務命令です。

    • 残業命令
    • 配置転換命令
    • 出向命令
    • 転籍命令
    • 出張命令
    など
  2. (2)業務命令を拒否することはできるのか?

    労働者と会社との間で労働契約が成立すると、労働契約上のさまざまな権利義務が生じることになります。たとえば、労働者が使用者に負う義務のひとつとして、「誠実義務」があり、使用者には業務命令権が与えられます。

    つまり、使用者は業務命令権に基づき、労働者に対する業務命令を発することが可能で、労働者は誠実義務に基づいて、使用者による業務命令に従わなければなりません。このように、原則として労働者は、下された業務命令を拒否できないことになっています。

    しかし、たとえ業務命令でも、それが正当な理由に基づかないものであれば権利濫用にあたり、当該業務命令は無効(拒否することが可能)です。

2、正当な理由なしに業務命令を拒否すると起こり得る処遇

正当な理由なく会社から下された業務命令を拒否したら、どのような処遇を受けることになるのでしょうか。

  1. (1)懲戒処分の対象となる

    一般的な会社では、就業規則において「正当な理由なく業務上の指示・命令に従わなかったとき」を懲戒事由として定めています。

    前述の通り、労働契約上の義務として、労働者に命じられた業務命令に従う必要があります。そのため、正当な理由なく業務命令を拒否した場合には、契約上の債務不履行となり、業務命令違反が懲戒の対象であることが就業規則上定められている場合には、懲戒処分の対象になる可能性がある点に注意しましょう。

    懲戒処分とは、会社が労働者に下す企業秩序違反行為に対する制裁のことであり、懲戒処分の内容には、以下のようなものがあります。

    • 戒告
    • けん責
    • 減給
    • 出勤停止
    • 降格
    • 諭旨解雇
    • 懲戒解雇


    どのような懲戒処分が下されるのかについては、業務命令違反の内容や回数、程度などに応じて異なります。一般的には軽い処分から始まり、段階的に重い処分が行われて、最終的には懲戒解雇となる傾向です。

  2. (2)会社内の人間関係が悪化する

    自身の気分などで会社からの業務命令を拒否していると、会社内の雰囲気が悪くなり、人間関係の悪化をもたらす可能性があります。

    他の労働者としては、「自分は会社の命令に従っているのに」「仕事がやりにくくなるから○○さんの機嫌を損ねないようにしてほしいのに」といったような不満を抱くことになり、労働者間で対立が生じるおそれもあるでしょう。
    このように人間関係が悪くなってしまうと、普段の業務をスムーズに行うことが難しくなるなど、仕事の効率も落ちてしまいます。

  3. (3)人事評価への影響がある

    会社からの業務命令を拒否することは、将来の人事評価にも影響を及ぼすことにもなり得るでしょう。
    同期入社の同僚と同じような仕事をしていたとしても、業務命令に従わなかったという点でマイナスの査定を受けることになり、昇給や昇進などの面で不利益を被る可能性があります。

    このように、正当な理由なく業務命令を拒否することは、労働者にとってマイナスの影響が多数生じてしまう可能性があるため、気分やより好みで会社の業務命令に従わないということはしないように気を付けましょう。

3、業務命令を拒否できる正当な理由とは

正当な理由があれば、自身に命じられた業務命令でも拒否することができます。以下では、業務命令を拒否することが許される正当な理由について、分かりやすく説明します。

  1. (1)労働契約の範囲外である命令

    業務命令は、労働契約上の根拠が必要になるため、どのような場合でも常に業務命令を発することができるというわけではありません。

    通常は、労働契約や就業規則を根拠として、会社には広範な業務命令権が認められることになりますが、労働者との個別合意によって、特定の業務命令が除外されていることがあります。

    代表的な例としては、労働契約時に職種や勤務地を限定する旨の合意をしていたようなときです。このようなケースでは、労働契約時に合意があることから、会社は労働者に対して、職種や勤務地を変更するといった配置転換命令はできません。
    つまり、業務命令を拒否したとしても、正当な理由があるため、不利な処分を受けずに済みます。

  2. (2)公序良俗に反する命令

    業務命令が法令や会社規則などに違反するような内容は、公序良俗に反するものとして無効です(民法90条)。無効な業務命令に従う義務はないため、正当な理由での命令拒否だと認められます。

    公序良俗に反する業務命令の例としては、横領や偽造、虚偽報告、粉飾決算への加担などといった内容です。

  3. (3)嫌がらせにあたる命令

    会社からの業務命令が労働者に対する嫌がらせ目的で発されたものであるケースは、当該業務命令は権利濫用にあたり、無効になります。

    たとえば、嫌がらせ目的で必要のない業務を行わされたり、追い出し部屋に人事異動させられたりするような扱いの業務命令は、たとえそれを拒否しても、業務命令違反になることはありません。

4、正当な理由で拒否したのに、懲戒などの処遇を受けてしまったら?

正当な理由で業務命令を拒否したにもかかわらず、会社から懲戒処分などの処遇を受けてしまったときはどうすればよいのかを解説します。

  1. (1)裁判例の紹介

    「違法な業務命令を拒否したとしても、業務命令違反にはあたらない」と判断した裁判例を紹介します(奈良地裁平成25年10月17日判決)。

    【事案の概要】
    原告Xは、Y病院に雇用されている正看護師です。Y病院からは、以下のような違法な業務を命じられたものの、それを拒否したところY病院から解雇処分を受けてしまいました。
    • 医師によらない診療録の作成、処方箋の発行
    • 診療報酬の不正増額請求
    • 訪問看護の名を借りた診療行為の指示
    • 要件を欠く訪問看護ステーション設立申請の検討
    • 障害者自立支援給付金の不正受給

    Xは、Y病院による解雇は不当解雇である旨を主張して、未払い賃金や慰謝料などの支払いを求めて裁判所に訴訟を提起しました。

    【裁判所の判断】
    裁判所は、Y病院による業務命令は違法な業務命令であり、違法な業務命令にXが従わなかったとしてもそれには正当な理由があることから、業務命令違反にはあたらず、Y病院による解雇は不当解雇にあたると判断しました。
  2. (2)不当な処遇を受けた場合には弁護士に相談を

    これまで説明したとおり、違法な業務命令を発せられたときは、それを拒否して解雇や懲戒など処分を受けることになったとしても無効となります。

    しかし、会社からの業務命令が実際に違法・不当なものであるかどうかは、法的知識のない労働者個人では正確に判断することが難しい事項です。不当な業務命令だと判断して拒否したものの、実は正当な業務命令であったという場合には、大きな不利益を被るおそれがあります。

    そのため、納得できない業務命令を受けた際には、ご自身で判断する前にまずは弁護士に相談をするようにしましょう。弁護士であれば、業務命令が正当なものであるかどうかを正確に判断することができるため、不当な処分を受けるリスクを回避することが可能です。

    また、不当な業務命令を拒否したことを理由に、解雇などの処分を受けてしまったとしても、弁護士であれば労働者の代理人として、解雇の撤回を求めることや労働審判・裁判によって不当解雇を争うこともできます。
    不当な処遇を受けてお困りの方は、まずは弁護士に相談することがおすすめです。

5、まとめ

労働契約上の義務として、労働者は、会社からの業務命令に従う必要があります。
しかし、業務命令の内容が違法・不当なものであれば、拒否することが認められ、業務命令違反にはなりません。会社からの業務命令に納得できないというときには、違法・不当な業務命令である可能性もあるため、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。

会社からの違法・不当な業務命令や不当解雇にお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

0120-353-048

平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

メールでのお問い合わせ
24時間・365日受付

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

豊橋オフィスの主なご相談エリア

愛知県:豊橋市、田原市、豊川市、蒲郡市、新城市、岡崎市、豊田市、安城市、知立市、刈谷市、碧南市、西尾市、 北設楽郡設楽町、北設楽郡東栄町、北設楽郡豊根村、額田郡幸田町
静岡県:湖西市、浜松市周辺にお住まいの方

ページ
トップへ