労災問題の解決にかかる弁護士費用はいくら? 内訳と目安を解説
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令和4年に愛知労働局管内で発生した労災事故の発生件数は、1万4135件でした。労災による被害を受けた場合には、労働基準監督署への労災申請や、会社との交渉や裁判などの手続きや法的対応が必要になります。
しかし、労災による傷病の治療が必要な状態のまま、申請のみならず会社との交渉まですべて自分自身で行うことは、本人にとって大きな負担になることは間違いありません。そのため、必要であれば、労災について会社に対する損害賠償請求を検討しているのであれば、弁護士に依頼することも検討すべきです。
とはいえ、弁護士への依頼については「どのくらいの費用がかかるのか」という点が気になる方も多いでしょう。
本コラムでは、労災問題の解決にかかる弁護士費用の内訳と目安、労災の被害にあったときに会社に請求できる損害賠償の項目などについて、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。
1、労災の解決に向け弁護士に依頼できること
労災(労働災害)の被害にあわれた方は、以下のような対応を弁護士に依頼することができます。
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(1)労災保険給付のアドバイスやサポート
労働者が業務上または通勤上の出来事が原因で負傷した場合や病気を発症した場合、または死亡した場合には、労働基準監督署による労災認定を受けることで、本人や家族は労災保険から以下のような補償を受けることができます。
- 療養給付
- 休業給付
- 傷病年金
- 障害給付
- 遺族給付
- 葬祭料(葬祭給付)
- 介護給付
弁護士から労災認定や労災保険の給付に関する申請についてアドバイスやサポートを受ければ、労働者側にとって不利な判断がなされることを回避して、給付を漏れなく受け取ることができます。
また、労働基準監督署長の判断に不服がある場合に審査請求や再審査請求等を行う際にも、まずは弁護士に相談してアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。 -
(2)会社との交渉による解決
労災が認定されたら労災保険から補償を受け取ることができますが、その内容は、労働者に生じた実際の損害の内容には見合わないことが多々あります。
労災保険では不足する部分を補うためには、会社に対して損害賠償を請求する必要があります。
ただし、労働者個人が交渉を行っても、会社側はまともに取り合ってくれないことがあります。
そのような場合にも、弁護士が代理人として交渉をすれば会社も話し合いに応じざるを得ない状況となって、交渉で問題が解決する可能性を高められます。 -
(3)裁判手続きによる解決
会社との交渉で労災の問題が解決できないときは、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起する必要があります。
訴訟になれば、労働者の側で、会社に安全配慮義務違反または使用者責任があることを主張立証していくことになりますが、裁判や法律に関する専門的な知識や経験のない一般の方だけでは、適切に対応することは困難でしょう。
訴訟になった際には、法律の専門家である弁護士に依頼してください。
2、労災認定の手続きは自身やご家族で行える
以下では、労災認定の手続きについて解説します。
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(1)労災認定の手続きの流れ
労災認定の手続きは、一般的に以下のような流れで行われます。
① 労災による傷病の治療
労災により病気やケガを負ったときは、まず、病院を受診して治療を受けましょう。
労災指定医療機関で治療を受ければ、病院の窓口で医療費を負担する必要もなく、基本的には無償で治療を受けることができます。
労災指定医療機関以外の病院で治療を受けた場合には窓口での自己負担が必要になりますが、いったん自己負担で支払った医療費も、後日に労災申請をすることで全額の還付を受けることが可能です。
② 労働基準監督署に労災申請を行う
労災申請は、所定の請求書を所轄の労働基準監督署に提出することで行うことができます。
一般的には会社が労働者に代わって手続きを行ってくれますが、会社が対応してくれない場合には、労働者やその家族が行うことも可能です。
③ 労働基準監督署による調査
労災申請を行うと、労働基準監督署が、労災に該当するかどうかの調査を行います。
調査の結果「労災に該当する」と判断された場合には、労災保険給付を受け取ることが可能になります。 -
(2)労働者やその家族でも手続きが可能
労災認定の手続き自体はそれほど難しいものではなく、労働者やその家族でも手続きを行うことができます。
手続きの流れや必要書類がわからない場合にも、労働基準監督署の窓口で相談を受け付けているので、必要に応じて利用してみましょう。
3、労災の解決にかかる弁護士費用の内訳と目安
以下では、弁護士に労災問題の解決の依頼をした場合にかかる費用について解説します。
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(1)弁護士費用の内訳と目安
弁護士に依頼した場合に生じる費用の内訳と目安は、以下のようになります。
なお、実際にかかる弁護士費用は個別具体的な事情や依頼する法律事務所の料金体系などによっても異なってくるため、正確な金額については、相談時に見積もりを求めることをおすすめします。① 相談料
相談料とは、弁護士に法律相談を依頼したときに発生する費用です。
相談料は相談時間に応じて発生するものであり、一般的には30分で5000円、1時間で1万円程度の費用がかかります。
基本的に、弁護士に依頼する際には相談が必須となるため、労災問題を依頼する際には相談料は必ず発生するといえます。
なお、法律事務所によっては、初回の法律相談については無料で対応している場合もあります。
② 着手金
着手金とは、弁護士に依頼をした際に最初に支払うお金です。
着手金については、相手方への請求額に応じて計算するのが一般的です。
たとえば、相手方に請求する金額が300万円であれば、その8%である24万円が着手金となります。
また、会社との交渉や裁判など、依頼する手続きごとに異なる別途に着手金が発生する場合もあります。
詳しくは、相談した弁護士に確認してください。
なお、労災による被害者はケガや病気により収入が減少している状況にあることから、「労災に関しては着手金は無料」という対応をしている法律事務所もあります。
ベリーベスト法律事務所は、初回相談料と交渉の着手金は原則として無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。
③ 報酬金
報酬金とは、事件が解決した際に解決の度合いに応じて発生する費用です。
報酬金は、実際に相手方から回収した金額を基準に計算することが一般的です。
たとえば、相手方から300万円の支払いを受けた場合には、その16%である48万円が報酬金になる、といった計算がされます。
また、報酬金は成果に応じて発生する成功報酬であるため、回収できた金額がゼロであれば報酬金は発生しません。
④ 日当・実費
日当とは、弁護士が事件処理のための移動により時間的に拘束される際に発生する費用です。
日当には、弁護士が裁判所に出頭する際に発生する「出廷日当」や遠方に出張する際に発生する「出張日当」などがあります。
日当の相場としては、拘束時間により変わりますが、半日であれば3万円から、1日であれば5万円からであることが多いといえます。
実費とは、事務処理にあたり実際に発生した費用です。
具体的には、交通費、通信費、郵便代などが実費にあたります。 -
(2)労災にも弁護士費用特約が使える?
弁護士費用特約といえば「交通事故の被害にあったときに利用できる保険の特約」とイメージされている方も多いでしょう。しかし、交通事故とは無関係な労災事故であっても、弁護士費用特約を使えることがあります。
また、自動車保険以外にも、火災保険や家財保険、クレジットカードなどに弁護士費用特約が付帯していることがあります。さらに、労災の被害を受けた労働者本人の保険でなくても、同居する家族が弁護士費用特約の付帯する保険に加入していれば、弁護士費用特約を利用できる可能性があるのです。
労災問題に関して弁護士に相談や依頼をする際には、まずは、利用可能な弁護士特約があるかどうかを確認してみましょう。
弁護士特約を利用することができれば、基本的には300万円までの弁護士費用が補償されるため、多くの場合には費用の負担なしに弁護士に依頼することができます。
4、会社に請求できる損害賠償
以下では、労災の被害にあった労働者が会社に対して請求することのできる損害賠償の項目を紹介します。
労災から支払われる療養給付や休業給付等だけでなく、会社に対しても損害賠償請求していくことで、より手厚い賠償を受けることができます。
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(1)慰謝料
慰謝料とは、「精神的苦痛」という損害への賠償金です。
労災に関する慰謝料は、主に以下の三種類となります。① 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
入通院慰謝料は、労災による傷病のために入通院を余儀なくされたことにより生じる精神的苦痛について支払われる損害賠償です。
入通院慰謝料の金額は、入通院期間や日数に応じて計算します。
② 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、労災により障害が残ってしまったことに関する精神的苦痛について支払われる損害賠償です。
労働基準監督署により障害等級が認定されたら、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料を請求することができます。
③ 死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、労災の被害にあった労働者が死亡したことで遺族が負った精神的苦痛について支払われる慰謝料です。
死亡慰謝料の金額は、亡くなった労働者が家庭内で果たしていた役割に応じて変動し、一家の支柱として働いていた場合にはもっとも高額になります。 -
(2)休業損害
労災により仕事を休んだ場合には、休業4日目から休業給付が支払われます。
ただし、休業給付は休業1日目から3日目までは支払われないほか、金額も給付基礎日額の60%にとどまります。
不足する金額については「休業損害」として、会社に対して請求することが可能です。 -
(3)逸失利益
労災により障害が残ってしまうと、労働能力の喪失により、将来に得られるはずだった収入も減少してしまう可能性があります。
そのような将来の減収分については「後遺障害逸失利益」として、会社に対して請求することができます。
また、被害にあった労働者が死亡してしまった場合には、遺族は「死亡逸失利益」を請求することが可能です。 -
(4)通院交通費
労災による傷病の治療のために電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合には、実費相当額が通院交通費として請求できます。
自家用車を利用した場合にも、1㎞あたり15円で計算したガソリン代を請求できます。
タクシー代については、必要性と相当性が認められる場合に限り請求することが可能です。 -
(5)将来介護費
労災により重度の障害が残ってしまうと、将来にわたり介護が必要な状態になる場合があります。
このような場合には、将来介護費を請求することが可能です。
具体的には、職業付添人を頼んでいる場合には実費相当額を、家族が介護をしているときは日額8000円を基準に請求することになります。 -
(6)弁護士費用
労災による損害賠償請求訴訟を提起した場合には、裁判所の判決で認容された金額の10%が「弁護士費用」として認められ、会社に対して請求することができます。
5、まとめ
労災による損害賠償請求などを弁護士に依頼した場合は、弁護士費用が生じます。
弁護士費用特約を利用することができるなら弁護士費用の負担が生じることはほとんどありませんが、そうでない場合には、ある程度の負担が必要となってしまいます。
ベリーベスト法律事務所では、労災に関する初回の法律相談料は無料となっているほか、労災問題に関する交渉の着手金も、原則として無料で対応しています。
ご自身や家族が労災の被害にあってしまい、会社に対して損害賠償を請求することを検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスへご連絡ください。
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