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業務中の熱中症は労災になる? 労災隠しをされたらどうすればいい?

2023年04月03日
  • その他
  • 熱中症
  • 労災隠し
業務中の熱中症は労災になる? 労災隠しをされたらどうすればいい?

愛知労働局が公表する「労働災害発生状況(令和3年)」の統計資料によると、令和3年に愛知県内で発生した労災事故は、7989件でした。

日本の夏の平均気温は上昇傾向にあります。そんな中で、適切な対策が講じられていないがために、熱中症になる可能性が高い労働環境もあるでしょう。熱中症は、重篤な障害が残ってしまったり、最悪のケースでは死亡してしまったりするリスクもあるため、きちんと対策しておくことが大切です。

万が一、業務中や通勤中に熱中症になってしまったら、労災認定を受けることで労災保険から各種補償が支払われます。本コラムでは、業務中の熱中症と労災との関係、会社が労災隠しをした場合の対応などについて、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が解説します。

1、業務中の熱中症は労災認定される? どんな要件が必要?

業務中の熱中症は、どのような要件で労災認定されるのでしょうか。まずは、熱中症と労災との関係について説明します。

  1. (1)熱中症が労災認定されるための要件

    熱中症とは、高温多湿な環境に居続けることによって、体温調節機能がうまく働かず、体内に熱がこもり、頭痛、けいれん、意識障害などさまざまな症状を起こす病気です。

    炎天下での屋外あるいは高温多湿な倉庫内で長時間働いていた場合には、熱中症になるリスクが高まります。このような熱中症は、下記に記載の要件を満たすことで労災認定を受けることが可能です。

    ① 医学的診断要件
    医学的診断要件とは、労働者に発症した疾病が熱中症であるかどうかを判断するための必要条件のことです。熱中症の医学的診断要件としては、以下のような内容をもとに判断されると考えられます。
    • 作業条件および温湿度条件などの把握
    • 一般症状の視診(けいれん、意識障害など)および体温測定
    • 作業中に発生した頭蓋内出血、てんかん、脳貧血などによる意識障害などとの鑑別診断

    ② 一般的認定要件
    一般的認定要件とは、労働者が発症した熱中症が業務に起因するものであるかを判断するための必要条件のことです。熱中症の一般的認定要件は、以下のとおりです。
    • 業務上の突発的またはその発生状態を時間的・場所的に明確にし得る原因が存在すること
    • 当該原因の性質、強度、身体に作用した部位、災害発生後から発病までの時間的間隔などにより、災害と疾病の間に因果関係が認められること
    • 業務に起因しない他の原因で発病したものではないこと
    なお、一般的認定要件の認定に際しては、作業環境条件、作業態様、労働時間、作業場の温湿度条件、服装、発病時期などを総合して判断されます。
  2. (2)熱中症になったときに労災保険からもらえる補償

    熱中症で労災認定を受けた場合には、症状の内容および程度に応じて、労災保険からいくつかの補償を受けられます。

    ① 療養(補償)給付
    被災労働者が労災保険指定医療機関で治療を受けた場合は、療養(補償)給付により、支払いをすることなく無償で治療を受けることができます。それ以外の医療機関では、一旦は治療費を負担しなければなりませんが、後日、還付を受けることが可能です。

    ② 休業(補償)給付
    熱中症により働けなくなった場合は、休業4日目から休業(補償)給付が支払われます。休業(補償)給付と同時に支払われる休業特別給付金を合わせれば、給付基礎日額の8割に相当する補償を受けることが可能です。

    ③ 障害(補償)給付
    熱中症により一定の障害が残った場合は、障害(補償)給付が支払われます。障害(補償)給付は、障害等級が1級から7級までは年金という形で、8級から14級までは一時金という形で支給されます。

    ④ 遺族(補償)給付
    業務中または通勤中の熱中症により労働者が死亡した場合は、労働者の遺族に対して遺族(補償)給付が支払われます。

    ⑤ 葬祭料(葬祭給付)
    熱中症で死亡した労働者の葬儀を執り行う際には、葬儀を行う方(実際に葬儀費用を支払った方)に対して、葬祭料(葬祭給付)が支払われます。

    ⑥ 傷病(補償)年金
    熱中症による治療を開始してから1年6か月を経過してもまだ治っていない場合は、症状に応じて傷病(補償)年金が支払われます。

    ⑦ 介護(補償)給付
    熱中症によって障害等級1級または2級の認定を受け、介護を要する状態になった場合には、介護(補償)給付が支払われます。

2、会社が熱中症の労災隠しをするのはなぜか

熱中症が労災にあたるにもかかわらず、会社は労災隠しを行うことがあります。

  1. (1)労災隠しとは

    労災隠しとは、会社が労災事故の発生を隠すために行う行為を指します。

    <労災隠しの例>
    • 労働基準監督署に提出義務のある労働者死傷病報告書を故意に提出しない
    • 労働者死傷病報告書に虚偽の内容を記載して労働基準監督署に提出する


    このような労災隠しが行われると、労働基準監督署による災害原因の特定・究明ができず抜本的な対策を講じることができないという問題、被災労働者が十分な治療を受けられず重篤な後遺症が生じるおそれがあるという問題、労災によって受けられたはずの補償が受けられないという問題につながります。

    そのため、労災隠しは、労働安全衛生法に反する違法な行為であり、労災隠しをした事業者には、50万円の罰金が科されることになります(労働安全衛生法120条5号)。

  2. (2)会社側が労災隠しをする5つの理由

    なぜ会社側が労災隠しをするのか、考えられる理由を5つご紹介します。

    ① 会社のイメージが低下する
    労災事故が起きたと世間に公表されてしまうと、会社のイメージが低下するでしょう。そして、取引先からの契約を打ち切られてしまう・顧客が離れるなどの可能性をなくすために、労災隠しが行われるケースが考えられます。また、現場の管理不足を原因に昇進が遅れるおそれがあることから、労働者同士で労災事故の発生を隠そうとするケースもゼロではありません。

    ② 労災保険料が上がる
    労災事故で労災保険を使うと、事業主が負担する労災保険料が上がってしまうために、労災隠しが行われることがあります。しかし、労災保険ではメリット制という制度が採用されていますので、20人以下の事業所では、労災保険の利用の有無・回数によって労災保険料が上がることはありません。
    経営者の中には「労災保険を使えば常に労災保険料が上がってしまう」と理解している方もいますが、その多くは誤解であることもあります。

    ③ 労働基準監督署による調査を受けたくない
    労災事故が発生して、労働基準監督署に申告をすると、労働基準監督署による調査が入ります。その調査時に別の違法行為が発覚するケースがあるため、会社によっては、不法就労や違法派遣などの発覚をおそれて労災隠しをすることがあります。

    ④ 労災保険の手続きが面倒
    労災事故が発生した場合には、大企業では対応部署が設けられているなど、労災時の手続きがマニュアル化されていますのでそれほど負担ではありません。しかし、中小企業では、労災事故が生じた場合の対応方法を把握している人がおらず、手続きが面倒だという理由で労災隠しが行われることがあります。

    ⑤ 労災保険に未加入
    労働者をひとりでも雇っている事業主には、労災保険への加入が義務付けられます。それにもかかわらず、未加入である場合に労災隠しが行われることがあります。

3、業務中の熱中症は会社の責任を問える可能性がある|安全配慮義務

会社には、労働者が健康と安全を確保し、働きやすい環境で業務を行うことができるよう配慮する「安全配慮義務」を背負っています。

年々、夏場の気温が上昇している日本の労働環境においては、労働者に熱中症が発症するリスクが高くなっていますので、会社は、労働者が熱中症にならないように対策をすることが求められます。

<会社に求められる熱中症対策>
  • 温度や湿度の管理を適切に行うこと
  • 労働者に水分や塩分補給を促すこと
  • 屋外作業では、日陰を作り涼しいところで休憩できるように配慮する
  • 熱中症を回避するための基礎知識に関して社内研修を実施するなど


このような安全配慮義務を怠った結果、労働者が熱中症になってしまった場合には、労働者は会社に対して、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求を行うことが可能です。

労災認定を受ければ労災保険から補償をもらえますが、あくまでも最低限の補償であるため、被災労働者に生じたすべての損害を回復するのに十分な補償とはいえません。

そのため、労災保険から補償を受けていたとしても、会社に安全配慮義務違反がある場合には、会社への損害賠償請求を検討するとよいでしょう。

4、熱中症の労災隠しにあったときの対処法

最後に、熱中症の労災隠しにあった場合の対処法をご紹介します。

  1. (1)労働基準監督署に相談

    労働基準監督署は、会社が労働基準法や労働安全衛生法などの法令に違反していないかどうかを監督する機関です。

    労災隠しは労働安全衛生法に違反する違法行為ですので、労働基準監督署に相談することによって、指導や是正など厳しく対処してもらえる可能性があります。また、それに伴い、会社が労災手続を行ってくれることにもつながるでしょう。

  2. (2)弁護士に相談

    労働基準監督署は、違反の取り締まりがメインです。つまり、労働者の被害回復に向けて動いてくれるわけではありません。
    そのため、被害を受けた労働者は自ら会社と交渉して、会社の責任を追及していく必要がありますが、個人の力だけで会社と戦うのは難しいこともあります。

    弁護士であれば、労働者の代理人として会社と交渉をしたり、裁判などによって労働者の権利を主張していったりすることが可能です。

    ひとりでの対応に不安を抱いている方は、まずは弁護士にご相談ください。

5、まとめ

業務中や通勤中に熱中症になった場合には、一定の要件を満たせば、労災保険から補償を受けることができます。
しかし、労災の対象であるにもかかわらず、さまざまな理由から労災隠しが行われるケースには注意しなければなりません。

労災隠しにあうと、労働者としては十分な治療を受けられないなどのリスクがありますので、早めに弁護士に相談するなどして対処することが必要です。

業務中や通勤中に熱中症になってしまった方や会社からの労災隠しでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスまで、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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