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損害賠償金を払えない場合はどうしたらよい? 必要な対応と交渉方法

2022年12月15日
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損害賠償金を払えない場合はどうしたらよい? 必要な対応と交渉方法

令和2年7月21日、豊橋市民にとっては身近なユニチカ損害賠償請求事件(住民訴訟)について最高裁決定が下り、事件が終結しました。市は裁判所の決定に従い、ユニチカ社に対しておよそ26億円の損害賠償金(遅延損害金を含む)を請求し、8月31日には支払われたと報告されています。

損害賠償金の支払いについては、会社などの法人だけでなく、個人であっても請求されることがあります。わざと、もしくはうっかり不注意で他人に損害を発生させた場合、加害者にはそれらを賠償する責任が生じるためです。

しかし、被害者から請求された賠償金の額が大きく、応えられるだけの十分な資産がないために、提示された賠償金が支払えないという事態も起こり得るでしょう。

本コラムでは、損害賠償金が支払えない場合はどうなるのか、また、どのように対処すべきか、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスの弁護士が説明していきます。

1、損害賠償を請求されたらどうなる?

損害賠償を請求されたからといって、直ちに賠償金を支払う義務が発生するわけではありません。

まずは、損害賠償金を支払わなければならない義務を負うケースと請求されるプロセスを見ていきましょう。

  1. (1)損害賠償金を支払わなければならないケース

    民法第709条では、不法行為による損害賠償を次のように定めています。
    「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」

    つまり、わざともしくは不注意で、他人に財産上の損害を与えたり、身体を傷付けたりするなどの結果が発生した場合は、その損害を償う責任を負うということです。

    たとえば、あなたが交通事故の加害者であったり、他人のものを壊してしまったりしたとき、被害者から損害賠償請求が行われ、あなたはそれに応じなければなりません。

    逆にいえば、その結果に対して何ら関係がない場合は一切の責任を負わないといえます。

  2. (2)話し合いで金額を決めていく

    損害賠償金の支払いを求められる場合、まずは、被害者から電話やメールなどの方法で、「発生した損害の責任を取ってほしい」という請求することが考えられます

    この場合、民法第722条1項の準用によって、民法第417条が「損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める」と定めるように、金銭的な請求となります。そこで、賠償を請求できる権利を持つ人物は債権者となり、賠償の責任を負う人物は債務者となります。

    当事者同士で話し合いがうまくいかない、話し合いすらできないという場合、相手は内容証明郵便を送ってくるでしょう。

    過剰な請求を阻止したい場合は、個人だけで対応するのではなく、この段階で弁護士に相談することをおすすめします。

  3. (3)無視し続けると相手の主張が全面的に認められる

    あなたが内容証明郵便を受け取っても損害賠償金を支払わない場合、相手は裁判所に訴えを起こすでしょう。

    相手が裁判を起こせば、裁判所から「訴状」が届きます。また、裁判所から、あなたの言い分を書いた「答弁書」という書類を提出するよう求められます。

    これを無視していると相手側の主張がすべてそのまま認められてしまうおそれがあるので、早急な対応が必要です。なぜなら、裁判で相手方の請求が認められると、強制執行によって給与の一部が差し押さえを受ける可能性が発生するためです。

    自分に非があってもなくても、損害賠償請求を請求された場合は無視したりせずに、適切に対処をする必要があります
    訴状が届いたらすぐに弁護士に相談するようにしましょう。

2、賠償金はどう決まる? 減額は可能?

相手側の主張が正しく、損害について支払う義務がある場合でも、その額が大きすぎて到底支払えないケースもあるでしょう。

そのような場合は、どのように対処すべきでしょうか。

  1. (1)賠償金額の算定

    損害賠償は相手に与えた損害を償うものですから、相手側がその損害の内容を証明し、金額を算定して請求します。

    しかし、相手側にも過失がある場合や、請求額が不当に大きすぎる場合は減額が認められます。賠償額が大きいと感じた場合は、減額の可能性を探すことをおすすめします

  2. (2)減額が可能な場合

    たとえば、交通事故などのケースでは、損害賠償の範囲については人的な被害と物的な被害に分けて計算がされます。また、治療費に加えて、後遺障害の有無なども考慮に入れる必要があるでしょう。

    しかし、以下のような要因によって、賠償金の額を減額することができると考えられています。

    • 過失相殺
      相手側にも落ち度があって損害が発生したと考えられる場合は、過失の割合に基づいて加害者の賠償額を減額する制度です。
    • 素因減額
      被害者側に肉体的、精神的な特性があることにより被害が深刻化した場合などは、その分は加害者の責任とはせずに減額するケースです。
    • 好意同乗
      車に誰かを同乗させて事故を起こした場合、同乗者が事故の原因となるような行為をしたケースでは、損害の額が減額される可能性があります。
    • 損益相殺
      事故を起こすことによって、損害だけではなく利益を得た場合は、それを考慮して損害額から減額されるケースがあります。


    いずれにせよ、相手側の事情を詳しく知る必要がありますが、たとえ知っていたとしても、法的な根拠に基づいて減額の交渉をすることは、一般の方ではなかなか難しいといえるでしょう。

3、賠償金が払えないと、どうなる?

賠償金を払う責任はあることはわかっているが、経済的な事情から支払えない場合はどのように対処すべきでしょうか。

  1. (1)放置してはいけない

    前述したように、賠償金が莫大で到底払えないと感じた場合、債権者からの請求を無視して放置してしまうケースがあります。しかし、相手側がそれに立腹して裁判を起こし、裁判で請求を認められた場合は弁護士費用や遅延損害金も認められて、さらに支払う額が増えるという事態も考えられます。

    また、裁判で支払いの義務が認められると、給与の差し押さえなどの強制執行をされてしまいかねません

    放置せずに、訴状が届いたら必ず弁護士に相談するようにしましょう。

  2. (2)自己破産はできない

    自己破産とは、裁判所に破産申し立てをして、借金をゼロにすること(免責許可決定)が認められれば、申し立てた時点での借金をゼロにして再スタートすることができる制度です。

    一定期間は特定の職業に就けないなどの制約はありますが、金銭的な負担が消えますので損害賠償の支払いの目処すら立たないという方には、魅力的な方法に見えるかもしれません。

    しかし、借金の原因が損害賠償金である場合、「免責不許可事由」に該当し、借金がゼロとならない(免責許可決定がなされない)可能性があります
    ただし、破産法253条1項2号及び3号において、免責不許可事由については定めがあり、損害賠償であれば必ず破産ができないというわけではありません。

    法的な判断が必要な事項になるので、まず一度弁護士に相談するようにしてください。

  3. (3)家族に責任が及ぶ場合もある

    原則として、債務者の責任がその家族に及ぶことはありません。しかし、損害賠償金の請求が家庭や職場に届いたり、給与が差し押さえられたりした場合には家族の生活にも影響するでしょう。

    また、あなたが亡くなって遺族が相続した場合は、債務も相続することになり、相続放棄をせざるを得ない事態になる可能性も考えられます。

    なお、相手に損害を与えた方が小学生や被後見人だったなど、責任能力がなく家族が監督者義務者である場合は、民法第714条第1項の規定に基づき、指導監督の義務を怠ったと認められれば責任を負います。

4、弁護士など専門家に相談すべきタイミング

前述したように、賠償金が支払えないからといって放置することは厳禁です。かといって、自分ひとりで対応するにも限界があります。家族に相談することができないケースも多いでしょう。

そのような場合は、専門家に相談しましょう。弁護士ならば、裁判にも対応ができ安心ですが、ケースに応じて、それぞれの専門家に頼ることも大切です。

  1. (1)トラブルが起こった直後

    交通事故やなんらかのトラブルが発生した場合、保険に入っているならばすぐに保険会社に連絡しましょう。警察や被害者への対応についても保険会社に相談することで、適切に証拠を確保することができ、手続きや交渉がスムーズに進むことが期待できます。

    保険会社に弁護士特約などが付いているケースもあり、弁護士を紹介してもらえれば、その後裁判などに進んだ場合もより安心できます。

  2. (2)債権者からの請求があったとき

    トラブルの結果、債権者から損害賠償の請求があった場合は弁護士に一刻も早く相談しましょう。

    賠償額が大きい場合、減額の交渉を期待しても、当事者同士では話し合いにもならないケースがあります。しかし、弁護士が交渉の代理人となることで相手側もしっかり支払ってもらえるものだと安心し、減額はできない場合でも、分割払いに応じてもらえる可能性があります。

  3. (3)裁判に発展した際

    裁判所からの通知を受け取った場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。
    放置していると相手側の請求がそのまま認められてしまいますし、自分で対応することも困難が伴います。すぐに弁護士に相談し、適切な対応を一緒に考えてもらいましょう。

    トラブルが起こった際、自分だけでなんとかしようと考えることは厳禁です。状況に応じて適切な専門家に相談し、アドバイスを受けて交渉に臨むことをおすすめします。

    弁護士ならば、代理人として債権者と交渉して賠償額の減額や分割払いなどの結果を引き出すことにも期待が持てますし、裁判になった場合も安心して手続きを任せることができます。

5、まとめ

「損害賠償金を支払いたい気持ちはあるけれど、額が大きすぎてどうしたらわからない」

そのような場合は、まずは専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。弁護士ならば、状況を適切に整理して、可能な支払い方法を一緒に考えることができますし、相手側との交渉を任せることも可能です。

損害賠償の責任を免れることは難しいですが、弁護士に任せることで仕事に集中でき、賠償金の支払いがスムーズになる可能性もあります。

損害賠償請求をされている、もしくは損害賠償金が支払えずに悩んでいるという方は、ベリーベスト法律事務所 豊橋オフィスへお気軽にご相談ください。経験豊富な弁護士が、お悩み解決のために全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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